伝統文化将棋の心を伝える将棋教室と、強くなる事を目的とした将棋道場では性質が違う。教室だけで大会で勝つのは大変で個々が強くなる工夫をしないといけない。しかし教室という場所に強くなるノウハウを持っている指導者がいるかは不明、いたとしても教室という場所でそれを語るかも不明。なぜなら教室はみんなが平等に強くなる場所だから。
あべしんブログは予備校的な情報を発信しています。
将棋の現実的な上達法についてちらほら書いてみたところ意外とアクセスがあってびっくり。ここらでいったん、それらを整理してみようかなと思ったのでした。
で、どこ基準でまとめようかなと思った時に、最近小学生の親の方から質問される事が多いのでおおむねそこ基準で書いてみました。
それでは、長文でいくぞ!
てぃっ!
◎小学生の特徴
1、漢字が読めない+読解力不足でまだ棋書が読めないので序盤がヤバい。
2、その反面、問題があって解答はこうですという問題集に関しては抵抗なく取り組む傾向にある。
まぁ、こんな感じでしょうかねぇ。
1は昔からそうだったんですが、最近は奨励会の低年齢化が進んでいて1のような状態でも序盤を強化していかないと勝てないという話です。
それでは、私だったらこんな指導をするというのを1・2を含む5つほど書いていきます。
1、漢字が読めない+読解力不足でまだ棋書が読めないので序盤がヤバい。
これについては逆に好都合かもしれません。
誰かにある程度、戦法・作戦の道筋を立ててもらったらどうでしょう。
妙な作戦だったり将来性が無さそうな戦法は可哀想なので指摘してもらった方がよいです。勝てる戦法・勝ちにくい戦法・観賞用の戦法、時代によって変わるのでスタートで間違わないようにしてあげたいところ、指導者の力量が試されますね。
私の場合は、おススメした作戦についてはベースとなる棋書を購入してもらいポイントについて解説。
場合によっては私自身が柿木将棋の研究ファイルを作ってコメント欄に解説を入れて「これとりあえず覚えろや」とやる時もあります。自分で言うのもなんですがこれかなりの成果をあげたと思います。まだ世に出ていない作戦や戦法の考え方を子ども用にアレンジして教えているので最強だと思います。知識を持てばそれだけで格上に勝てる可能性が高まります。ただ、私が忙しいと更新されない事、研究ファイルを作るのに膨大な時間と手間がかかるので身体がもたないので現実的に厳しいという点があります。
最強ではあるが指導者側の負担が大きすぎてあかん、そうであれば負担を少し教わる側に移していこうという発想になります。
どうするかというとメインの作戦は私が提示して→疑問に思ったところは「ソフトに聞け」という方針でやっています。
ソフトがあれば、自分で研究してもらう事が出来るので自習できます。
そしてソフトを使う局面を見極める力は重要。
なぜそこが急所の局面なのか、ソフトを使うに値するか、私は感想戦で教えています。希望が無い変化の延長線上をソフト研究しても意味が無いですからね~。
2、小学生の最大のアドバンテージは、抵抗なく問題集を解いてくれること。
これは大人にはなかなか出来ない。
この能力を使って、将棋の核となる「地力の部分」を伸ばすためにガンガン問題を解かせます。
【ステップ1】
以下の本の知識は遅かれ早かれいつかは覚えないといけないので早いとこ片付けましょう。
・詰将棋ハンドブック3手詰~7手詰
基本的な詰み筋を覚えるのが目的です。
浦野先生のシリーズは冊数が多いので5手詰までガンガンやって早いとこ終わらせましょう。2分冊の場合は簡単すぎてこれ以上やる意味ないと思ったらやらなくていいと思います。
あと、正直7手詰は難しいので無理そうだったら後ででもいいと思います。
解き方としては、タイムアタックではなく合駒含め全ての変化を読み切ります。
時間はいくらかかっても良いです。
もし解答手順で当たっていても他の変化で間違えたらやり直しです!
低学年の子どもさんには解答チェックは難しいので親と協力してやる感じになるかもしれません。
※詰め将棋に抵抗ある人は、DVD講義から入るべし。
これは詰将棋が苦手な子どもさんにとっての救世主になりえるかもしれない。
※詰将棋が解けなくても諦めない。
私は子どもの頃から詰将棋が解けませんでした。
いまだに「3手詰です」と問題を出されても30分くらいかかります。5手詰なら1時間かかることもあります。ただし、実戦なら30秒あれば詰ます事が出来ます。詰将棋本で得られる詰み筋の知識は実戦の中で覚える事が可能なのでみんなが簡単に解いている詰将棋が解けないから自分はダメだと思い込まない事。
・渡辺明棋士が監修している次の1手(手筋系)
最近では基本手筋を覚えるにはこれが定番になっているみたいですね。
色々手筋の本はあるけどまずこれが解けないと話になりません。
ちなみに私は下の大内先生の本を使っていました。
超わかりやすかったです。
・必至&凌ぎは金子本、まずは基本問題のみ解く。
金子タカシ先生の本は、基本と応用問題に分かれています。
まずは基本問題を潰しましょう。
当然、全変化を読み切って正解です、タイムアタックではなくじっくり考えてください。応用問題は今の段階ではやらなくていいです。正直、基本問題だけでも結構難しい。なお、時間に余裕がなければ『凌ぎの手筋200』はひとまず置いておいてもいいと思います。
・その他
【ステップ2】
・ステップ1で残した金子タカシ先生の応用問題を解く。
県代表数回で実力のアマ5段の知り合いですら簡単には解けないと言っているのでうんうん唸りながら解いてください。そういう時間が力になります。ちなみに小学生でも解けちゃう子はいます、ぜひプロを目指してください。
※あべしん先生は基本問題と応用問題の簡単なやつだけ解きました。
・『詰将棋パラダイス』・・・完全に英才教育です、無理な人はやらなくていいと思います。2桁以上(〇〇手詰)の詰将棋が解けると将棋の才能あるのではないかという一つの指針になります。プロを目指してもいいかもしれませんね。ちなみに長手数の詰将棋は実戦で出ないのでやる意味ないと思うかもしれませんが数十手先を読む「読み」の練習をしています。当然ながら私はやっていません、というか解けませんw。
・終盤の次の1手・・・詰将棋・必至・凌ぎ・鬼手など終盤系の全ての要素が混ざっているので苦労して解かせましょう。私は詰将棋や必至問題が苦手でしたが総合問題になると得意でした。
☆問題集のテクニカルな使い方☆
初見で問題を解くのは時間がかかるので「ちょっと考えて分からなければ、すぐに答えを見てまずは解法を覚えましょう」という受験勉強的なやり方はどうなのか。
確かにそれで解法パターンは秒で覚えられるかもしれない。
その結果、問題は解けるかもしれない(受験勉強的に言えば点は取れる)。
ただし、未知のものへ向かっていく思考力・それを解いたことによる自信はつかないでしょうね。そもそも受験は点取れば終了ですが将棋はそうじゃないので性質が違うと思うんですよね。実戦は答えが用意されていない未知の世界、自分で考える力が大事です。それを分かってやるならいいと思います!私においても、未知のものへ向かっていく思考力が欲しいのではなく詰み筋を優先して知りたいという時は解法をガンガン覚えるようにしています。
3、棋譜並べとか
・大山康晴15世名人の棋譜を並べる
序盤は古いし分からないと思うので無視してよい。
中盤以降の大山先生の重厚な駒運び・中終盤の指し方を学ぶのが目的です。
正直、級位者の内は並べても分からないと思うので何となく雰囲気を掴む程度でいいと思います。
・藤井聡太棋士の棋譜を並べる
今一番強い人がどういう感覚を持っているか知ってもらう。
・スマホの「モバイル中継(月550円)」と「名人戦棋譜速報(月525円)」・「将棋棋譜DB」でプロの棋譜を見る癖をつける。自分の使う作戦についてプロではどういうトレンドなのかを確認させる。主に序盤の確認的な棋譜並べなので知識として知っておく感じです。
4、あとは実戦、実戦あるのみ。
とにかく盤数こなさないといくら1~3まで単発の知識を仕入れても実戦で使えるようになりません。実戦は超大事です。
そんで対局は、ノータム指しをせずにじっくり時間を使って指すようにしてください。
それは秒読みに入ってからもです、ギリギリまで考えた経験・読みの蓄積こそが地力につながります。
また、最低限のマナーを守れない人はここぞという時に将棋の神様から見放される可能性もあります。
相手は感想戦までしてくれる人がいるのが理想。
自分では気づかない事を教えてくれるので吸収の割合が高まります。
ソフトと感想戦してもいいのですが弱いとソフトの言っている事が分からないので意味ないんですよね。
指導者の人とガンガン指すのが良いと思いますが毎回呼んでいるとお金が無くなるので強い人がいる道場に行きましょう。そして家に帰ってきて棋譜を思い出して反省しましょう。
なお、最近の学生はなぜか自分が指した棋譜を思い出せない症候群にかかっているようですが治してくださいw 私は将棋はじめて1年経たないくらいで自分が指した棋譜は1日何局やっても全て思い出す事が出来ましたよ。棋譜を思い出せないと反省出来ない、すなわちさっきまでの時間は無駄になっちまうという事なので危機感を持ちましょう。
道場がないなら、インターネット将棋倶楽部24で指すしかありません。
※地力をつけたいという目的であれば将棋ウォーズはやめた方が良い、ウォーズはやりすぎると弱くなります。ただし、序盤の研究には使えます。
「ネット将棋は自分には向かないんです」という意見も分かります、私もネット将棋は全然得意じゃありません。しかし、周りに対戦相手がいない状況であれば無理してでもネット将棋の環境に慣れる努力をしましょう。
そして、肝心なのは点数じゃない。ちゃんと1局1局しっかり考えて、1で覚えた序盤を使って、2~3で培った中終盤の力を発揮できたかが大事です。違和感があれば、ネット将棋終わったら反省して、また対局あるのみです。
※ネット24も2100の四段~いかないと相手もあまりにもひどい手を指してくるときがあるのでそれくらいまでは頑張ってほしいものです。このブログでも何度も書きましたが奨励会を目指すのであれば小学校3年生で初段を目標に頑張ってもらいたいです。欲を言えば小学校1年生で初段、2年生で2段、3年生で3段、4年生で4段‥・以下略くらいは欲しいです。これは冗談ではなく本気で言っています。
5、定期的に師匠的な人に棋譜添削、来てもらってお悩み相談したり対局したり。
☆棋譜添削は、やってもらった方がいい。
戦法の考え方が間違っていたり(大体これ)、駒の方向がおかしいと思うように勝てない。私はそんな感じで序中盤中心、あとはあまりにもひどければ終盤にコメントする感じです。終盤の詰む詰まないはもはやソフトに聞けば解決するので出る幕なしと思っています。
☆悩み相談
私は主に今使っている作戦についてのヒアリングをしています。
まだ使えるのか、そろそろ黄色信号なのか、そうであれば原因はどこかを話しています。基本的に、謎の戦法は自分で研究して使っているうちが一番勝てる時期、プロが頻繁に指しだして本が出てしまうとみんなチェックするので急激に対策が進む傾向にあります。
最近ではノーマル三間飛車が指されすぎていてあひゃって感じですね~。まだ貯金があるので大丈夫ですが以前ほど勝てなくなるのは間違いないでしょう(>_<)研究&研究の消耗戦になる前に次のトレンドを読んで自分が常に勝ち続けられるように手を打っていく必要があります。(プロの棋譜でトレンドを読むべし。)
子ども同士の対局でそこまでしなくても思うかもしれませんが、上にいけば行くほど子どもの後ろにいる強い指導者同士の代理戦争になっている気がしなくもないので油断できません。
あと、子ども大会多すぎて全部出ると自分の勉強時間がなくなるので必要に応じて優先順位をつけて出てくださいというアドバイスもします。今言った1~5まできちんとやろうと思うと小学校を中退しない限り絶対に時間が足りないはずです。大会で経験を積むのも大事ですがメンバー的にマンネリを感じてきたり、出ても勝てないのが分かってきたら実力不足確定なのでみんなが大会に出ている時にせっせと棋力を向上させるしかないでしょうね。
そういう理由であればプロ棋士の指導対局(多面指し)ですら欠席していいと私は思います。プロの指導対局はネタ作り(子どもの成長記録的な思い出の写真)とかモチベーションを上げるために使うなら良いと思います。間違っても短時間で劇的に上達する魔法と思わない事。 そもそもプロに勝ったとか負けたとかあとちょっとで勝てたとかは意味がないですね。多面指しの指導対局は人数をこなすのでプロも精一杯なので強さの基準にならないです。もっと言うとプロとアマは土俵が違うのであくまで指導対局はアマに楽しんでもらうためのサービスの一環と捉えた方がよいでしょう。
それではプロの指導対局をどうしても受けないといけない人はどうするべきか。私は、常日頃から課題だな~研究テーマだな~という将棋を指して感想戦で「これはどう思いますか?」と自ら見解を聞くようにしています。これがポイントで自分から聞かないとプロがこちらの意図しない局面に戻して「う~~ん、ここはこうだったんじゃないかな~?」と始めてしまいますからね。
ちなみに私は高校生の頃に当時はありえない・今ならありえる形をプロに試したら「ありえない」と言われたので「具体的にどう咎めますか?」と聞いたら「はいはい」と言われて最悪でした。そこで思ったのは、プロのプロとしての棋力と人間性を見きわめてあげないと教わる方もしんどいという事です。
☆指導者との対局。
一番心配なのは、ソフト遊びに陶酔して知識だけつけて地力が伸びてないんじゃないかという事。なので平手で最低1局以上は指してどんなもんかチェックします。
駒落ちは平手戦で通用しないのであまりしたくありません。
とはいえあまりにも初級者の場合は基本手筋や詰み筋を覚えてもらうためにやる可能性はあります。ただし駒落ち定跡ではなく平手用の戦法を使ってもらいます。
駒落ち定跡は時間が勿体ないので覚える必要は無いと思います。
【まとめ】
とまぁこれが現段階の小学生向けの私が思う現実的な指導法ですね~。今やっている1つ1つの勉強法・行動は何の力をつけるためにやっているのか、そのやり方で合っているのか、正しい勉強法をしていても自分に合っていないのではないか、伸び悩んでいる人は見直してみましょう。
また、アマ強豪の知り合いがいればどんな勉強法をしていたか尋ねてみるのも手です。必ずしも王道とは言えないやり方で強くなった人が何人もいます。
そして、勉強法云々の前に強くなりたいという本人の熱意とそれに見合った時間を親が許可しないとなかなか伸びないという事情もあります。
将棋の上達は、勉強法・本人のやる気・家庭の方針と3拍子揃わないとうまくいかないところがあるんだよね。あ、あと講師の質か、危うく逃げるとこだった。
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コメント
良い悪代官
興味津々で拝見しました。
するどい切り込みはすばらしいです。
個々の指摘は、いろんな意見があると思いますが
私が考える指導基本は
「紙は自分で・・」です。
必要なことは、自分から進んで行う。
他の人に紙を渡してあげなくても良い。
もらうことを待っていてはいけない。
自分から取りに行く。
これが、私の指導方針です。
将棋指導で一番難しいことは、基本を教える、ことではなく。
それを子供たちが、自分なりにどのように応用するかどうかです。
つまり、応用の考え方を教えることではないのか。
これは、難題です。
現在も試行錯誤中。
指導の指摘、参考になりました。
2018/10/29 URL 編集
あべしん
私の価値観で書いた偏った記事ですが読んでいただきありがとうございます。
「紙は自分で」の精神は同感です。
受け身では何も得られませんね。
強い子供の親の理解・行動力は特筆するものがありますよね。
みんな優しいので他人の紙も持っていくんですよね。きっと伝統文化としての将棋指導が行き届いているのかと思います笑。
応用の考え方は数学全く出来ない私が言うのもあれですが論理的な思考が必要な気がします。
強い人同士感想戦やると、変化を検討→ダメなら消す→なにがダメだったか分析して代替案を検討という流れになります。それを感想戦等で小学生にも分かるように話す感じです。続けていたら小学生からなかなか良い質問が出るようになったので少しは効果があったかもしれません。
将棋以前に論理的思考を鍛えるゲームをしたら意外と成果が上がるかもしれません 笑
2018/10/29 URL 編集
大谷
2019/02/03 URL 編集
あべしん
私レベルでよろしければお答えいたします。
m(__)m
よろしくお願いします。
2019/02/03 URL 編集
大谷
僕はウォーズ3段、将棋会館初段の中1です。ここから中学生名人戦で2日目に残れるくらいの棋力になりたいです。どのような勉強法をすれば良いでしょうか?
2019/02/08 URL 編集
ノーマル四間飛車党
ここを磨かないと定跡をいくら勉強しても結果が出てこないと思います。
2019/02/10 URL 編集
大谷
2019/02/10 URL 編集
あべしん
そうなんですよね。
研究が面白すぎて終盤の鍛錬が疎かになる魔力が四間飛車にはあるので危険です。
私の大学時代の過ちがそれでした、、。
2019/02/10 URL 編集
あべしん
アツい質問ありがとう。
私は中学生大会の専門家ではないけどブログで答えておいたよ。コメント欄では語りきれないからね!
頑張ってください。
2019/02/10 URL 編集