「序盤研究としての棋譜並べ」と「地力をつけるための棋譜並べ」について書いていこうと思う。
今の若い人達がやっている「モバイル中継」や「棋譜データベース」の最新棋譜を並べる作業は序盤研究の要素が強いよね。最新の序盤を知る事で自分の作戦にも取り込んでいこうというスタイルでソフトと併用するとより効果が上がると思います。私も意識が高いので「名人選棋譜速報」にも課金して順位戦の全ての棋譜に目を通すようしているよ。ただし、1譜につきPC・スマホ上で30秒~1分くらいしか見ないけどね、それも序盤~中盤までしか見ないというね。笑 やっぱり現代将棋は情報戦だからアホみたいな筋にハマらないように質より量でどんどんチェックしていかないといけないと思っているよ。
そんでもって、覚えたハメ筋で楽して勝ちたいねっていうのが本音。特に最近の子どもは序盤偏重型の割には序盤のチェックが甘いという傾向にあるので序盤でこっちが優位にさえ立てば特に怖いところなく勝てちゃうネという事に気づいてしまった。イェーィ!これからもおれは「せんせー」と呼ばれながら生きていくぜ(^_-)-☆
え??
そんなんで地力がつくわけないだろ!?
おまえせんせーなんだからしっかり盤面に並べてプロの棋譜を味わえよと??
う~ん。
現代将棋って作戦にハマれば勝つ時も大差、負ける時も大差だから結構あっさりしているんですよね。
果たしてそういう棋譜を並べて力がつくものなのかと!?
まぁ、つくだろうね(笑)
でも、どうせだったらソフトが無かった時代の将棋を並べた方が面白いよ。
特に、みんながよく知っている大山・升田・羽生・谷川・中原・米長・森内・天野宗歩先生の棋譜はおススメと世間では言われているね。中終盤の攻防に力が入っていて、簡単にどちらも折れない→金銀ベタベタして泥仕合→精神力の勝負っていう展開が一番並べていてためになる。「あぁ、こうやって相手の心を折っていくのか~」と形勢以上に勉強になります。なかなか現代将棋だとそういう展開にならないから地力をつけるのが難しいんだよね 可哀想なことに。
ベテラン選手に特徴的な粘り腰の技術は「地力をつける棋譜並べ」世代だからっていうのもあると思うんだ。
選手として私も大会に出る機会が多いけど、若い選手は勝つ時も負ける時もマッハな印象。良くなれば大差勝ち、悪くなっても勝負手を指さずに淡々と指して終了という展開が多い。 特に中終盤で粘りを欠くようなあっさりした手を指す子が多いかなって思う。そこもっと時間使って気合入れて粘るところだぞ~っ思うんだけど、そこで考えられないというのは今まさにその局面が急所であるというのが分からないからなんだろうナ。
対してベテラン選手は嫌ですね~。鋭く決める手はあまり指してこないけども簡単には崩れないという手が多くてフラストレーションがたまりますw 中年男のしつこさよって米長先生も何かに書いてましたね。
しかしですね、粘り強い棋風かそうでないかってのは性格以上に最初にどの戦法を覚えたかっていうのが大きいと思う。
昔流行った、矢倉とかノーマル振り飛車は、角道を止めて息長く戦う戦法です。簡単には悪くならないけども大差ですぐに良くなるという将棋でもない、押したり引いたり忍耐力が必要なんですよね。対して、角道オープン居飛車&振り飛車の現代将棋は、すぐ技が決まってゲームセットだから粘りもヘチマもないんですよね、そういう設定の将棋だから。
最近、ノーマル系振り飛車や角道を止めて戦う雁木が再注目されています。
そうなってくると、ベテラン選手の貯金が活きる展開です!
ノーマル振り飛車や雁木をかじり出した若手にベテランがいつの時代の作戦だよという謎急戦をする光景を結構見かけます。まぁ、初見であればうまく対応出来ないというのも仕方ないです、謎急戦はいつの時代も強いので。
しかし!謎急戦をくらった後にどうやって粘っていくかというのが角道クローズTHE・昔の将棋の裏テーマでもあるんです、これ大事、急所です。間違っても現代将棋のノリでノータイムあっさり指しをしてはいけないよ、そこで粘るチャンスを逃すともはや収集困難になるから時間を使ってひねり出すのは今しかないのです。これねぇ、棋力が離れた者同士やっているとなんとかなっちゃう事があるので教訓を得られないんですよね。地元では無敵、外に出ると予選落ち常連というあべしんの学生時代を体現したような人生を歩むことになるから強い人と指そうね。
とはいえ、今まであっさりとした研究将棋をしてきたのに今さら急に「ひらめけ!」「ひねりだせ!」、「頭を使え!」と体育会系のノリで言われても困りませんかね?笑
現代将棋は恐ろしい攻撃力でガンガン相手を叩くのに夢中なので、いざ自分が攻められると「どうやって受けたらいいのか分からない」「どう耐えて、どう反撃したらよいのかわからない」という状態になりませんかね?笑
もはやこれは定跡を勉強してきちんと受けよう~っという話を越えています。
過去に発売された全ての定跡書を読んだとしてもそれは克服できないでしょうね。
キミの周りにいる自称定跡マスターの棋力が低いのはそのせいだよ^^
想定外の仕掛けに対してどう粘っていくか・どういう方針で指すか・中終盤の地力をつけるにはどうしたらよいか、その答えは偉人達が教えてくれます。
で、将棋の偉人クラスになると棋譜集なるものが発売されるんですよね。
〇〇全集的なね。
基本的にどれ並べても強くなるんだろうけど、病状💊に合わせて並べるのがこの世界では良いと言われている。
代表的なのを挙げておきます。
◎受けが強くなりたいという方は…
・大山康晴十五世名人の棋譜
・森内俊之十八世名人の棋譜
◎最近、攻めの組立てがひどいんだよねって方は…
・中原誠 十六世名人の棋譜
・谷川浩司 十七世名人の棋譜
・渡辺明永世竜王の棋譜
◎天才について知りたい方は…
・升田幸三実力制第4代名人の棋譜
・幕末の棋聖 天野宗歩の棋譜
◎とりあえずなんでもいいから強くなる棋譜並べをしたい方は…
・藤井聡太七段の棋譜
・羽生永世7冠王の棋譜
◎勝負強くなりたい方は…
・東海の鬼 花村元司九段の棋譜
・新宿の殺し屋 小池重明アマの棋譜
と、用途に合わせて処方箋を選べばいいと思います。
いやさぁ、強くなる人は爆発的にに棋譜を並べまくっているイメージがあるんですよね、中途半端じゃなくて本当に爆発的に徹底的に。
山形出身プロも、田舎にいてやることがないからなのかとにかく古い棋譜も新しい棋譜も選り好みせずに死ぬほど並べをしていた気がする。棋譜並べをすることによって整頓された手筋集とかでは得る事の出来ない実戦のテクニックを吸収する事が出来るからそりゃ強くなる。
私の実家には、大山・木村・升田・天野・米長・中原・山田先生などなど分厚い棋譜集が置いてあるですが残念なことに少年時代一切並べなかった\(^o^)/それが、今この弱い棋力に繋がっているのだと思う。詰将棋を一切解かない上に棋譜も並べないという悲劇、私の場合はやる気が無かったからしょうがないですが。
しかし強敵と当たるようになって苦労した。難しい局面で「この先どう指すべきかと」考えた時に過去の参考になる記憶は私しかいないという脆弱な基盤しか得られなかったのでね。それでも論理的に局面を考える事で県優勝くらいまではなんとかきたのだが、考えるのって時間がかかるんだよね。山大の土屋君なんか棋譜並べやりまくっているから秒で急所に手が伸びる。私はじっくり考えないとダメなんですよね~。しかも考えて→また考えての連続なので非常に疲れる。棋譜並べをしていれば〇〇先生ならこういう方針で指すでしょう~って感じでバシバシいけるから指針にはなると思うからいいよね。
◎『現代に生きる大山振り飛車』は神本
この本に関しては、私もねっつく読みました。
解説は私が尊敬する藤井猛九段なので、毎回ワクワクしながら読んだ記憶があります。今日はどんな神講義をしてくれるんだろう(*‘∀‘)みたいな。
そして、内容もスカスカとみせかけて結構分量があるので棋譜並べデビューに躊躇している方は業界最大手・王道の大山本がおすすめ。特にミソの量が少ないあっさりしたアサリ汁になりがちなゴキ中&角交換振り飛車&早石田しか知らない現代振り飛車党に読んでもらいたい。
大山先生の粘り強さを体感できるうえに古くて新しいノーマル四間の講義を藤井先生から教えてもらえるので序盤の勉強にもなって中終盤の勉強にもなるという超最強の書物だと思う、読め。
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コメント
ふぁんた
またそういった中終盤の力をつけたい場合、一手一手考えながら並べるのか、それとも数を並べて手に染み込ませるのか、その辺りの意見も聞けたら嬉しいです!
よろしくお願いいたします。
2018/07/17 URL 編集
あべしん
お名前から拝見して藤井九段のファンなんでしょうか(笑)
ふぁんたさんがどれくらいの棋力か分からないので0から語らせていただきます。
まず、雁木はいいですよね!角道を止めて戦うので先後ともかなりの確率で誘導する事ができますからね、研究しがいのある戦法です。
そして、雁木には67銀+57銀型と67銀+47銀のツノ銀型がありますよね。
これらは相手の出方によって指し分ける形で、8/13に『新型雁木の全て』という本が発売されるので要チェックです!
そして雁木の将棋全般に言えるのは受け身になりやすいという事です。
しかし新型雁木に関しては、受け身ではあるけども激しく反発していくという特徴があります。結果、何が言いたいかというと「新型雁木は超最新型の現代将棋なので研究が全て、負ける時は粘りが利かないのでそうならないようにプロの棋譜を追ってください」という事です(笑)。なので、棋譜データベースからひたすら雁木の棋譜を拾って保存して攻めの成功パターン失敗パターンを覚えていくのがいいかと思います。
しかしそれではあまりにも味気ないので提案です!
そうですね、ふぁんたさん流の雁木新手を何か考案してみてはいかがでしょうか? 前例の無い手を指されると相手も困惑すると思います、手将棋の殴り合いに誘導しましょう(笑)。
そこで、役に立つのが地力!
大山先生の受け将棋の技術がそういう展開であれば非常に有用だと思いますよ。
なお、棋譜並べの仕方に関しては、解説があれば読みながら進めてもいいのですがそれすら理解出来ないとそこで時間がかかって嫌になる時があります。とりあえず「こんなもんだろ」と手に覚えさせる形で、味の良い手は駒音高くリズムに乗って楽しく並べると良いと思いますよ!解説は気分が乗ったら読むとかそんな感じでもOkです。
頑張って下さい^^
2018/07/17 URL 編集
ふぁんた
返信ありがとうございます!
名前から藤井先生が出てきたのは面白かったです笑。もちろん尊敬していますが。
雁木について、今のプロで指されている形はやはり研究将棋なんですね。
アドバイス通り、仕掛けに注目して数を増やしてみようと思います。また自分なりの仕掛けも・・・
とても難しそうですが、考えることのモチベーションとなりそうで楽しみです!
棋譜並べについて、そういった気楽に行える方法を推奨してくれるのはいいですね。基本的にはそのようなやり方を今までしていたので、続けれる気がしてきました。
アドバイスありがとうございます。またこれからもブログ読ませていただきます!
2018/07/18 URL 編集
天の川
僕は県で四段で指してます
以前、県の強豪の棋譜を大量に並べる機会がありまして、(50程度の棋譜を何度も並べました)その時に急激に棋力が伸び、その時から棋譜並べ信者になりました。
棋譜並べに関して、あべしんさんと全く同じことを考えて、実践していました。同じことを考えてらっしゃる方がいて嬉しいです!
2018/07/18 URL 編集
あべしん
いつも読んでくださりありがとうございます<m(__)m>
着眼点が素晴らしいですね!
私も新聞を切り抜いて地元の棋譜を見ていますよw
将棋は、 周りにいるちょっと強い知り合いから教えてもらうのが上達への近道なのですがそうもいかない場合がほとんど。そんな時、アマ強豪の棋譜を並べれば身近にいる先生のような感じで取りくみやすいですね。
そしてアマの棋譜の良いところは「即効性」があるところだと思います。彼らはプロに比べて分かりやすい将棋を指すので見ていて面白いです。天の川さんが急激に上達したのも頷けます。 他の人があまりやっていない方法を発見するのが上達には大事のような気がしますネ。
まぁ正直、手っ取り早く3段4段までいきたいのであればアマ強豪の棋譜でもプロの棋譜でもあんまり関係ない気がします、指導対局もわざわざプロに教わる必要性も無いですしね。
面白い情報ありがとうございます。
ご活躍期待しております。
2018/07/18 URL 編集