今回の掲載する原稿は前回(お茶が飛ぶようです)と同じH27年の最強戦「Y寺さんvsT部井さん」のT部井さん自戦記・・・
なんですけども・・・第1譜~最終譜まで一切将棋の解説をしなかった(笑)のでボツになって完全お蔵入りした原稿です。
T部井さんの実力を持ってすれば解説は余裕だと思うんですが伝えたい事があったから書いたんだと思います。
さて、そんな貴重な原稿をT部井さんから頂いてしまったので載せないわけにはいかないでしょう~~!!
それではどうぞ~~
3部作です!!
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◎2年前の反省記 (※平成25年東北六県大会の事です)
「負けました」
私が告げると会場が凍りついた。
2年前、地元山形開催の東北六県大会大将戦4回戦の出来事だ。
岩手県の全国トップレベルO山君と対戦。
笑顔が笑顔を呼ぶ様に早指し相手には早指しになりやすい。
私は対局開始10分程で投了してしまったのだ。
各30分40秒の大会で対局終了は通常1時間超が普通である。
隣で必死に戦っていた副将のF谷君が動揺したのを覚えている。
団体戦の大将としてあるまじき行為だ。
会場中が呆れ果てただろう。
しかも4連敗。仲間の顔が正視できない。
こんな人間が大将ではチームの最下位は必然だ。
格上のO山君に対して普段指さない横歩取りの奇襲戦を仕掛けたが大きな見損じがあり、局面は終了形だったのだ。しかし少なくても団体戦であることを思えば自分の時間を使い切るまで投了してはいけなかった。
全てにおいて未熟だった。
この大会以降自信を喪失し、勝てなくなった。
◎今泉先生の教え
今泉健司プロ試験合格のニュースが流れたのは昨年の12月だ。興味があり今年3月にその軌跡を綴った本を購入した。
脳天に衝撃が走った。
内容の9割が自分の数々の挫折や失敗談を赤裸々に語っている。それを反省し途轍もない高いハードルを乗り越える過程で揺れ動く心の有り様を人間らしく正直に語るその文に心底感服した。年齢、性別、性格、趣味等々自分と近ければ近い程人というものは共感するものであろう。先生とは同年齢で、レベルは違えど共通、共感する部分が多いのではないかと本から伺えた。
ならば胸襟を開き教えに従い実行あるのみである。
先生は勝負で大切な事は「心」であると説く。
対局時の平常心。将棋に対する謙虚な心。仲間に対する感謝の心。
2年前の愚行以降、勝てなくなった私は付け焼き刃であるが無理矢理真似する事から始めた。
まずは対局時の平常心。何事も模倣からだ。
藁にもすがるこの行動が今年過去最高の結果に繋がったのではないかと信じて疑う余地がない。
(※平成27年春、T部井さんは県アマ名人で2度目の優勝を果たした)
◎感謝の心と勝負の心
記録はA部S太郎君。この対局は俺がと我先に来たのを私は知っている。2回最強戦を制した強者は謙虚であり素晴らしい青年だ。S太郎君有難う。
昨年荒んだ心の栄養剤になったのは仲間の活躍だ。
兄貴分のM明さん、Y寺さんが東北六県で団体優勝した。M明さんにいたっては5戦全勝だ。
M田S雄君も旧知の仲。
他県から私が弱いと思われるのは自業自得だが、山形県は弱いでは納得がいかないのだ。
長兄K野さんは還暦直前での遅すぎる初タイトル、しかも県名人を獲得した。
仲間が結果を出した。心底嬉しかった。
今年六県大会の先鋒として出場する。積み重ねた愚行の清算の舞台だ。
若い仲間の才能を邪魔せず、彼らを鼓舞するのも私の大事な役割りだ。
県連から頂いた対戦相手の棋譜をG藤M美さんの道場で子供達と並べる。
棋譜並べは皆でやったほうが効率がいいし楽しい。
心を整え、最善の準備をして皆で必ず勝とう。
この記がでる頃には結果が出ている。結果が楽しみな自分がいる。
※Y寺さんvsT部井さんの将棋は、T部井さんが終盤に戦法独特の距離感から繰り出す妙技で逆転勝ち。すさまじい勝ち方だった。 この年の最強戦はお世辞にもT部井さんは好調とも言えなかったのだが執念がとても伝わってきた。その結果、3位入賞。県ベテラン強豪は調子が悪くても簡単には折れない、なんだかんだで立て直してくるのが私含め若手世代との違いだと思う。
なお、同年7月に行われた東北六県大会でT部井氏は先鋒戦準優勝と雪辱を果たした事も追記しておく。
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どうでしたか~?
一人の県強豪が自信を失ってから復活を果たすまでの回顧録。
ダイヤモンド職人もびっくりの希少価値が高い情報です。
元々実力がある人がなぜ勝てなくなったか・その時どういう心情だったか・復活するために何をしたのか。
スランプは誰にでもある事なので後輩達の道しるべになると思います。
将棋の戦術書とか勝ち方の本は金で買えますがこういう体験談はプレイスレス。
T部井さん、自身の体験談を惜しみもなく披露していただきありがとうございました!!
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