棋戦 :2022年12月17日
第23回東北高校新人戦女子の部4回戦
K沼2級(山形・高1)vsK藤四段(青森・高1)
山形新聞掲載日:2023.6/2~2023.6/7 (全5譜)
・1譜 6/2(金) 将棋をJH高校で
・2譜 6/3(土) 善悪を超えた手
・3譜 6/5 (月) 涓滴岩を穿つ
・4譜 6/6 (火) ここに至るまで
・5譜 6/7 (水) JH高校に感謝
戦型 : 四間飛車vs斜め棒銀
□掲載の意義
東北高校新人戦は素晴らしい大会なのだが知らない人が多い。
そんな人達のためにこんな記事を書いた。
2022年東北高校新人戦で女子K沼さん優勝、男子清N君2位の快挙。
男女のうちどちらかが優勝は過去にあったが1位+2位は県勢過去最高の成績。ここまでくると、さすがに山形新聞の記事でバッチリ取り上げてもらえました~。ふたりともよくやった(こういうのは最初が大事で翌年同じ成績でも取り上げてもらえない可能性がある)。
さらにさらに、K沼さんの優勝については、山形新聞に観戦記掲載という流れになった!
東北高校新人戦がこんなに注目されたことはなかったと思うのでうれしい限りである。
□女子の棋譜掲載はレア
・名人戦&選手権→地区予選を通過するのがきつい。
・高校選手権→女子の部に参加者がいない又は内容的に厳しいとアウト。
・レディース大会→コロナ渦になって中止
・ジュニア女子団体→令和4年は中止
こんな感じで女子の棋譜掲載が厳しい状態である。
今回のK沼さんの観戦記掲載は、時代の潮流にうまく乗った!
※ひとつ裏技があって県職場団体対抗戦で決勝に進出すれば棋譜が載る。
これで先鋒K沼さんの棋譜を2022年は掲載してもらった。
□誰が書くんだろう問題
私は高校時代に自戦記を書いたことがあったので、今回はK沼さん自戦記で良いのでは?と提案した。
しかし高校生は勉強が本分にいつからか変わってしまった。
そういうわけで私が書くことになった。
作成期間は、5/3、4、5、6の4日日間。K沼さんにナイスなコメントをもらい無事完成にたどりついた。
今回から、中学生以下は「君」、高校生以上は「さん」になり「K沼2級」と書く事が出来なくなってしまったのは残念であった。
□1譜 将棋をJH高校で
東北高校新人戦は、コロナ禍になってから参加者縮小で1日強行スケジュールで開催されている。
大会当日は雪が降っていたのでいつもより1時間早く会場のある仙台へ向かった。
めちゃくちゃ眠かったが、車でテレビを観ながら行ったとのこと。
観戦記冒頭の「東北を制するもの全国を制す」誕生秘話!
本大会の半月前に行われた県職場団体戦。
あべしん・ねこP少年・K沼さんのチームは2位だった。
閉会式が終わり、1階へ降りるエレベーターの中で・・私が
「次は東北新人戦。東北を制するもの全国を制す( ゚Д゚)」
と思いつきで言ったのが事の発端。
そのときK沼父が「名言きた!」と言ったのだが、名言のわりには、ふたりの反応が良くなかった。
大会会場はエスポール宮城。
計15名参加→宮城1、青森3、秋田0、山形3、福島4、岩手4
本局は3連勝対決の最終4回戦である。
先手K沼さん(山形1)vs後手K藤さん(青森1)。
勝てば優勝、負けると点数で3位以下に後退の可能性有り。
K沼さんは小6で天童将棋交流室デビュー、選手としてはかなり遅い方で中学選抜と夏の高校選手権は全国大会予戦敗退。
K藤さんは、全国高校選手権5位入賞などジュニア時代からの強豪でキャリアが違う。
対照的なふたりの対局となった。
戦型は、先手K沼さんの四間飛車vs後手K藤さんの△64銀急戦。
K沼さんの「これは無理~!負けた~!」は素直で良い。
多分、みんなそう思っていたと思う\(^o^)/
最終段落。
「カラオケで叫びたくなる~」は、いつだったかK沼父が「娘は友達とカラオケに行ってます」と教えてくれたことから。
その後の文中「そんな時は~」に続く言葉は、タイトルがJH高校なので校歌を入れるしかないと思った。
歌詞に「駒草のように」というフレーズがあった。
その数日前、
山東OBおがっしーから、M本くんが自分と同じ駒草杯を受賞したという連絡をしてきた。駒草杯は、卒業時に部活優秀+学業優秀で貰える賞。
短期間で「駒草」という単語を2回も聞いたので、ついに気になって調べてしまった。
駒草って…
蔵王に咲く花なんすね\(^o^)/はじめて知ったわ。
説明を読むと、駒草って形が「駒」に似てるんですね、だからそういう名前なんだと、将棋絡んでますね~。
そこでひらめいた。
JH高の制服エンブレムはもしかして?
(図形としてなんとな~く覚えていた)。
JH高校HPを見ると「駒草がシンボルの校章を制服に~」と書いてあった。
そういうわけで
「 駒草の校章に手を当てて~ああ城北 山形JHと歌ってみよう 」
という一文に決まったのである。
タイトルの「将棋をJH高校で」も9文字紙面限度いっぱいに使っており、将棋アニメの第一話っぽくて好きである。
□2譜 善悪を超えた手
2譜&3譜で将棋の解説を書かないと全体のバランスが保てないと思った。
先手K沼さん、後手K藤さん。
ここから面白かった。
10手進んで下図。

▲57角は「へ~」っていう受け方。上図以下△56歩▲同銀△76歩に▲67金も「ほおおお」という感じ。
先手のK沼さんは対棒銀定跡を応用して受けている感じなのかな。本に書いていない局面になってもしっかりバランスをとって受けていることに感心した。
上図以下△75銀と7筋の位を押さえる。
後手の狙いは、△64歩→△74飛→△73桂→△65歩とじっくり攻めてくることかな。そこまでいくと受け無しなので▲46角を考えてみたい。
↓
以下△64歩に▲45銀と出て左辺は受け流す方針。
受け流す→語源が受け+流すなので受かってなくてよい(笑)。上図以下△74飛に▲58飛と戦場をどんどん相手の王様の近くへ移していく。
以下
・△73桂には▲55角と角をぶつける。角交換になれば後手の陣形は隙が多いので先手良しという発想。
・△66銀と突っ込んでくる手には▲同金△同角▲61銀とひっかける。
以下
・△51金には▲63歩
・△53歩には▲52銀成△同金▲54歩とどんどんいく。
以下△同歩▲同銀△53歩には▲63歩で攻めが続く形だ。
再掲下図。
以下△51金打はいかにもダメそうだが実際はどうやるか?
以下▲52銀成△同金上
ここは▲55角と指したいのだがその瞬間に△57歩がある。こういう時は▲67歩と角の位置をずらすのが手筋。
以下△99角成とさせてから▲55角がそつない攻め方で先手よい。
角交換すれば振り飛車良し!
本譜は▲74歩と左辺を力で押し込んで行こうという方針。
こういう歩も何かの定跡にありますよね。
以下
・単に△同飛なら▲65銀△84飛▲76銀で先手まずまず。
・本譜は以下△86歩▲同歩の交換を入れたのがK藤さんさすがの手順。そのあと△74同飛▲65銀△84飛となりK藤さん優勢。
8筋の突き捨て一発でこうも将棋は変わるのか。
以下▲76銀△同銀▲同飛△75歩と進行。
ここでは以下▲65歩と角道を通して勝負したかった。
以下△76歩なら▲84角が△62の銀当たりでまずまずか。
再掲下図。本譜は…
以下▲78飛△86飛▲88歩と辛抱する、K沼さんは根性の手が多い。
ここで△7六銀または△87歩くらいでも先手困っていたと思う。本譜は落ち着いて△53銀と遊び駒の活用したが…
上図以下、振り飛車ひとめ▲15歩と指してみたい(持ち歩2枚+銀なので)。
以下△同歩に▲13歩。
以下
・△同香は▲14歩△同香▲25銀△13銀▲13角成!
・△同桂は▲14歩△25桂▲26歩
・△同角は▲同角成△同香▲12歩で攻めが繋がる。
・△56歩は…
以下▲68角が飛車取りなので先手もまずまずやれそう。
再掲下図。本譜は
▲97銀
( ゚Д゚)
K沼さん…?
審判長のS木東北研修会幹事補佐が「▲9七銀は善悪を超えた手 」と言っていた。
いや~その通りだと思った(笑)。2譜タイトルはこれで決まりでしょう。
▲9七銀は本局を象徴する手なので2譜最終図及び3譜の開始図で使うことに決まり!これ以外ないっす。
□3譜 涓滴岩を穿つ
「青春の汗と涙とド根性」は、絶対に勝ちたいという気持ちがぶつかる将棋を経験した人なら分かる話だろう。
勝つ人は筋が良い手ばかりではなく泥臭い手を指して、勝ちを拾っていくものだ。
しかし現実(本譜)はここを境に急激に先手が悪くなっていく\(^o^)/
以下△85飛▲46角△55銀!▲57角△56歩!▲48角△64歩!先手が角を動かしている間に後手がたくさん指す。
もう先手ツラい😹
以下▲73歩は涙が頬からこぼれ落ちそうな手。
以下仮に△62金▲65歩(飛車捌きたい)△73桂(▲65歩を咎める)と逆用されても先手悪そう。
再掲下図。本譜は‥
以下△65歩と勝ちに来る(若々しい!強い将棋だなぁ)。
上図以下▲68飛。
以下△66歩▲同金△同銀(代えて△13角の方が厳しい)▲同角△同角▲同飛
先手さっきより状況が良くなったような気がする。
とはいえ、△57歩成で後手が悪いはずがないんだよなぁ。
流れで▲61飛成までいく。
しかし、この局面が意外と難しかった。
次に▲54歩や▲31銀が入ると後手も気持ち悪い。何か受けなきゃいけないのだが、最善の受けが△62金というのがあひゃ。
以下▲51龍△61金打(難易度高い)のときに
▲33銀△同金▲41角△22王の変化を読み切らないと後手は指せない手。秒読みでこれ選ぶのはかなり怖いと思います。
一歩間違えたら終わりなので。
再掲下図。本譜は…
△51歩「金底の歩、岩よりも堅し」。
これは打ちたくなる。
しかし以下▲66角!という普通の手があった。
以下△44歩▲57角。あれええええ?
先手いきなりやる気出たのでは??
ここらへん、K藤さんに誤算があったと思う。
以下△76歩。
以下▲72歩成は、
涓滴岩を穿つ(けんてきいわをうがつ)!!
後手陣を攻略する、と金の雫 ができた!
※涓滴…四間飛車の達人藤井猛九段の代表的な揮毫。
進んで下図。
以下あえて銀をとらない▲81龍はすごい。
K沼メモ「と金を残した方が攻めやすいでしょう」
K沼大先生!
□4譜 ここに至るまで
急に回想シーンに入るのがアニメ的手法。
K沼2級は中2の頃にあべしん道場に来た。
K沼2級「質問があるんですけど」
あべしん「どうぞ(〇〇戦法の対策はどうしたらってやつかな)」
K沼2級「こうされるとあの対策を使えないし、かといってこう待つと今度はあの対策を使えない…(略)どうしたら?」
あべしん「( ゚Д゚)」
それについて正確に回答するには、単元ごとの定跡の知識が必要だった。
タテ(単元)を覚えてはじめてヨコの議論になるので…。
あべしん「うーん、それを説明するにはあと1年くらいかかるねぇ~」と適当にごまかした(笑)。
そもそもこんな質問してくる級位者はなかなかいない。
普通の級位者は戦型の体系的な話については気づかないし、仮に気づいてもそれを言語化して筋道立てて質問できるレベルにはない。
そういう意味では、K沼さんは才能あるな~と思った。
というか、才能値に努力が追いついていない状態だなと。
※第2譜で対棒銀の知識を使って斜め棒銀を受ける妙技を見せていたので、タテ×ヨコができるようになってきたのねと成長を実感。
文中のW辺元県竜王戦はこの記事。
K沼さん負けはしたけど素晴らしい将棋で覚醒していた。
「本局は才能に努力が追いついた日のアニバーサリーである」
実は、本譜のタイトルを「アニバーサリー」にしようかとも考えたが「そんな、めでたいもんじゃねぇな、ここに至るまでの努力があったよな」というわけでそのまま「ここに至るまで」という堅いタイトルになった。
最終段落はK沼さんの通信簿みたいになった。
☑棋譜読み上げのテンポがよい
☑率先して盤駒に片付けを手伝う
担任のコメント→えらいっ!
棋譜読み上げをやれるの本当すごいと思う。
人間将棋はニコニコ動画で晒されるしプレッシャー半端ないっス。
M着くんとも、真横から盤を見て棋譜読み上げできるのは特殊能力すぎるでしょって話をしていた。男子も出来ないと思う、これは。
1譜のカラオケ→棋譜読み上げ→「声のお仕事」をしていますというイメージ。
最終行。「選手として報われなきゃウソでしょ~」→いくら色々と頑張っても、選手として報われなきゃ何者にもなれない。だからやるしかない。
終盤戦。
▲54歩と垂らしたのはオシャレな手。以下△52歩ならそこで▲62とが厳しい。歩を5筋に打たせることで後手の飛車の利きを消す手筋で参考になる。
□5譜 JH高校に感謝
「あれれ~~」と偽コナン君(CV:K沼TMK)が登場してしまい将棋はお開きに…。 CV…キャラクターボイスの略。K沼さんのコナンの声マネが出てしまったら終わりでしょう。将棋どころではない。
最終図はこちら。
K藤さんからは、
・先手の大駒が目一杯働く瞬間を投了図に選んだ→心意気を感じる。
・この投了図が一番美しい。ここを選べるのは強いからだよなぁ。
・以上2点から「今日は負けましたけど」という余力を感じた。
K沼さんが東北優勝!
K沼東北高校新人王爆誕です。
プレッシャー☆catsの先鋒がやってくれた。
県職場対抗団体は全敗であひゃだったが、「むしろ手ごたえを掴んだ」と言っていた。「あれがなかったら優勝はなかったかもしれない」と振り返ってくれた。
いや~それにしても
▲97銀が・・・
窓辺で寝ている猫に見えるのは気のせいでしょうか?笑
タイトルの「JH高校に感謝」は優勝してなかったら狙いすぎており、書けなかった(笑)。
これからも将棋をがんばってほしいね。
END!
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