序盤は「究極の決定版」の変化が出ない限り、後出しじゃんけんが有利。
誰かが「これがこの戦法・定跡の基本変化でーす」と発信するとまた誰かが「それは間違っている」と指摘する。
最初から完璧な定跡を作ることは無理で細部まで手順を検討することによって戦法の理解も深まる。その理解を持つ人間が増えれば局面へのアプローチの仕方も多様になりそんな感じで定跡は進化して今に至る。最近はアプローチがみんなソフトでGO!なのでアマがやってもプロがやっても似たような感じになるところはある。もっともその人のガッツとセンスでソフト解析する箇所の切り口が変わるので違いは生まれてくる。
定跡を研究するということについては妥協せず追求する姿勢が大事だと思うがあまり厳密に追及しすぎるとただの序盤研究が仕事の人になってしまいリアルで勝てなくなる。私も一日中ソフトと入力作業をやっていたことがありアホみたいに弱くなったことがあった。選手としての顔がある人ほど注意しないといけない。
さて、現在コロナ禍の大会中止ラッシュシーズン、序盤研究をどうするべきか。こんな時だからこそ深く深く研究するのか、それとも広く浅く手を伸ばすのか、正解は人それぞれな事に違いない。ここでは私が今どんな意識で序盤を見ているのかを書いていこうと思う。
まず、結論から言うと今のような時期は序盤研究はほどほどが良い、決定版を出すくらいの気合で時間とエネルギーを使うべきではないと思っている。
基本的に将棋選手の1年は、
・短期的には直近の将棋大会に向けての準備
と
・長期的に今後どんなスタイルで行こうかというという用意に追われている。
コロナ禍で大会が無いということで今年は必然的に長期的な視点になるのだが、今になって毎年連発する将棋大会は疲労と共に上達のための程よいプレッシャーを与える役目があったのだなぁと感じるところである。
私に関して言えば今年は四間飛車の行く末を案じながらただただ川の流れを見ていようかなと思っていたのだが川がみるみるうちに血に染まる未来が見えてしまった。それが6月から始まった【ノーマル振り飛車撲滅キャンペーン】である。
・6/23日発売『振り飛車を一刀両断! 右四間飛車エルモ囲い』
舟囲いだと成立しない変化がエルモなら成立すると記されているので序盤の序盤から駒組みを見直す必要があった。それに伴いエルモだけではなく天守閣や米長玉銀冠、穴熊へのアプローチも再考する必要性があり頭が痛くなった。
・7/13日発売『とっておきのエルモ』
そもそも基本図になるのか?という前提条件がソフトでかなり詳しく研究されており振り飛車は変化する箇所が著しく少ない、これはヤバい本が出たなという印象で胃に穴があきそうになった。
・7/22発売『AI時代の新手法! 対振り飛車金無双急戦』
これはエルモほどダメージはくらわなかったが歴史に埋もれていた厄災(富沢キック)を掘り起こしてきたので対策をとる必要があると思った。今後あらゆるタイミングで富沢キックを志向する居飛車党が増えるとなるとかなりめんどくさいことになる。
以上3つの厄災が降り注いだわけですが変な話これがですね、かなりモチベーションに繋がりました^^
☆ステップ1☆
具体的に出版される前に自分なりの対策を準備しました!
材料はマイナビ将棋ブックスの新刊紹介記事!が役に立ちました。(本気でやるならプロの棋譜を時系列順に並べたりソフトの棋譜も集める。)
たとえばコレ⤵
金無双急戦の紹介記事だが金無双急戦とかの前に「富沢キック」の成立条件について調べなければいけないことが暗に示されている。あとはなんで△14歩が入っているのかと細かいことを言い出すときりがないくらいヒントが転がっていて退屈しないぞ!
さてさて、ここで重要なのはこの段階ではあまり深入りしすぎないということ。細部まで突き詰めて自己満研究をしても本を開くと「ソフトで〇時間検討した結果こうなりました」と全否定される恐れがあるからだ。そうなると時間的にあひゃなので本気を出すのは次のステップ。
↓
☆ステップ2☆
本が発売されたら自分が用意した対策が書いているかどうか答え合わせをする。言うなればこの瞬間のために予習(ステップ1)をしてきたのだ、本を開く瞬間は本当にわくわくするぞ!
そこでもし、あなたが発見した対策が書いてなかったりその上をいっていればその戦法へのストック1として使えます、おめでとう💐
すでに本に書かれていたり、そもそもその局面になりませんと全否定されていたら残念ながら新たに対策を考えることになる。こんなことになるんだったら予習は時間の無駄と思われるかもしれないがそうではない。予習したほうがその戦型への理解が深まるので早く定跡書を読める。加えて自分の研究のどこが甘かったかを知る機会になるので次はもっと精度の高い予習ができるようになる、君はもう立派に研究者への道を歩き出しているのだ。
さて、本に書いてある変化は金を出して買ったからには元をとるの精神で相手も使ってくるので対策を立てないといけない。定跡書の構成は以下のツイートの通り。
対策を練る作業は、上記の盲点を突く作業でもある。
時間と棋力と忍耐力を要するがうまいこと本に書いていない変化を発掘できれば勝率は上がるので本気でやるべき!…大会が間近に迫っている状況ならね。
◎コロナ禍がもたらす時間的な余裕と弊害
と、ここまで書いてあれだがコロナ禍大会中止ラッシュという状況では頑張って対策を出しても新鮮な研究を用いて1勝をもぎとる機会が無い。
来年もし大会があるとしても半年以上先なので誰かが自分が考えていたことと同じ事をSNSで発表すれば研究は新鮮味を失いやがて腐る。(そういうことが実は結構ある。)
半年以上という期間はプロの公式戦で指されて有力な対策が生まれるには十分な時間でもある。
↓
そしてその対策を居飛車党が対策するだろう(輪廻)。
↓
いたちごっこだなぁ。
というわけで、私もそれなりに対策を考えるけど突き詰めてやらずにどこか傍観する感じで浮いた時間を詰将棋や棋譜並べとか地力をつける勉強に回しています。最近とても良い記事だなと思ったのがこれ、Twitterの民おおやま氏が書いたエルモの崩し方①という記事。対エルモの終盤の考え方・囲いの崩し方がよく分かる記事で大変ためになる。流動的な序盤よりもこういう情報の方が価値が高いのではと思いはじめた今日この頃です。 ↓
で、いよいよ大会の開催が決まったらその大会で勝つためにその時点での最新の戦法事情を見て対策を立てようと思っています。もっともギリギリすぎてもダメですよ、新しい事をやる時はある程度実戦経験を積んでコツを掴まないと勝ち星には繋がりませんからね。
◎今後対策をぼんやり予習する戦法について
・9/11日発売『固めてドカン! 対四間飛車ミレニアム&トーチカ戦法』
トーチカ囲いに関してはそもそも将棋Youtuberショーダン氏の動画を超える内容なのかというところからですね。また、ミレニアム囲いについてはなぜ扱う必要があるのか謎ですが高橋先生はミレニアムが上手かった気がするのでちょっと期待しています。予習したいので早くマイナビ将棋さんに本の紹介記事を書いてもらいたいですね~。
・仮『端歩交換居飛車穴熊』
マイナビが出すと言ったら出すので今年中には出るような気がする。藤井聡太棋聖も推している戦法なのでかなりの脅威です。大会がもし来年初頭からあるとすれば対策する時間がないので早めに出してほしいですね(涙目)。
それにしても『エルモ右四間』『とっておきのエルモ』『AI流対振り金無双』『対四間トーチカ&ミレニアム戦法』『端歩交換居飛車穴熊(仮)』が今年1年で出版されたら笑えるレベルの厄災ですよね、これほんと五大厄災。AIが創り出した新大陸に冒険へ行った振り飛車党は壊滅寸前ですよ。しかしそこに救世主が!!
・9/23日発売『1冊でわかるノーマル振り飛車 ~基礎から流行形まで~ 』
まぁ…なんとなくプロの最新棋譜を時系列で並べて終わりのようなタイトルで不安ですがね。しかしながら著者の宮本先生は過去の出版物を読む限りサービス精神が強めなので期待できそうとも言える。続報が待たれますね。
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コメント
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2020/08/15 編集
abcn
下記記事にて回答致しました。
https://abcnshogiblog.com/blog-entry-1668.html
よろしくお願い致します。
2020/08/15 URL 編集