将棋漫画『 PRICE 女流棋士飛翔伝 』を読んだら電王戦と女流棋士独立問題を思い出した

作品名:『PRICE 女流棋士飛翔伝』全3巻
ジャンル:女性プロ棋士 
漫画 :前鳥八代 原作:maa坊
監修: 広瀬章人棋士
出版社: 竹書房 (バンブーコミックス)
発行日:2015年3月14日
販売価格: 680円(電子書籍:612円)

感想ネタバレ注意


□女性初のプロ棋士誕生


新羅香織と黒川楓は共に奨励会の三段である。

 

二人の違いはルックス。

こちらが香織

 


対してはぶくぶく太り髪も伸び放題で清潔感が無いキャラクター。


と、まぁこんな感じだったので香織のほうが人気があった。

 

奨励会三段リーグ最終戦、勝てば自力昇段がかかった大一番で二人は激突する。

 

結果、楓の勝ち

 

香織は他力の2番手で四段昇段となった。

 

日を置いて行われた記者会見

棋界初、それも二人の女性棋士が誕生したということでマスコミが詰めかけていた。

 

そこに現れたの姿に皆驚いた。

こちらが

  

猛烈なダイエットで大変身!香織以上に脚光を浴びる楓。

 

以後、2人の注目度は逆転することになるのだった。


と、ここまではすごく面白かった、これは期待できる作品だ~と思ったのになぜか「将棋界の重要事件を学ぼう!」というストーリーになってしまった\(^o^)/しかしまぁせっかくなので解説していこうと思う。

 

◻ソフトvsプロ棋士「雷神戦」


リアルで行われた電王戦を参考に描かれています。

参考記事→『永遠の一手ー2030年、コンピューター将棋に挑むー』を読んだらソフト使っても勝てない人の理由が分かったという記事の最後「私の覚えている人類vsコンピューターの記憶」。


ソフトvs人類の歴史は‥・


フェーズ1 女流棋士最強者が負け

       ⇓

フェーズ2 引退棋士が負け

       ⇓

フェーズ3 プロ棋士が出なくてはいけない状況に。←今ここ


はっきり言ってソフトのほうがプロ棋士より強いので指したら負ける。そんなとき成り上がり魂が強いが自ら立候補、もし自分が勝てば時計の針をフェーズ1の女流棋士まで戻せますよと(どういう理屈なんだw)


楓は、要求を強めてくるソフトのプログラマーに対してもズバズバ言う!


人は本質的に人を応援するから棋士がいなければソフトの価値は無い

 

こういうのって実際そう思っていても言っちゃうと「器が小さい」と思われるので言いにくいんですよね~。


大会の事前準備としては、あらかじめ対局で使用されるソフトがプロに貸し出される。プロはそれと戦い本番まで傾向と対策を練るのだが…


楓の対戦相手のプログラマーは対局1週間前になって「対局に支障をきたすバグがあった」としてソフトウェアの差し替えを申し出る。


大会運営としても興行がうまくいかないと困るのでそれを認めたが、なんと差し替え前に比べてソフトが強くなってしまった


これもまぁ実際にあった話を参考に作られています。

2014年の第3回電王戦の佐藤紳哉プロvsやねうら王戦

参考記事⇒第3回将棋電王戦第2局でのソフト変更問題のまとめ

当時かなりアツくなって私も見ていましたが知らない世代も多いと思います。佐藤棋士は全然エンジョイじゃなかったと思う。まぁ水面下で色々な話があったらしいですがこれを契機に第4回電王戦では期日を過ぎたらバグを発見してもそれをいじるのはだめというルールになった。それが直接の原因かは分からないですが電王戦ファイナルで阿久津主税八段がAWAKEに例の筋を披露して21手で勝ったり(正確には開発者が投了した)しましたよね。参考記事⇒将棋ワンストップ・ニュース 電王戦FINAL、AWAKE開発者将将棋巨瀬亮一さん「ハメ手を使うプロ棋士の存在意義」を問う


同じく出場した香織は必敗の将棋を入玉で引き分けに持ち込む。これも実際にあった第2回電王戦第4局の塚田九段vsPuella αのエピソードです。参考記事⇒「第2回将棋電王戦」第4局のレポートが公開。コメント数は過去最多を記録 これも当時、感動しました。人間の恐ろしさをみました。

 

広瀬棋士登場

黒川楓が広瀬の持つタイトルへ挑戦する話。

 

広瀬棋士が漫画で動く!ファン感涙の展開。


︎女流鳳凰戦開幕

女性なら誰でも参加OKの大会!

現実の大会としてはマイナビ女子オープンやリコー女流王座戦ですね。

 

さて、これでやっとこの漫画の一つの山場が見えてきました。

 

ズバリトーナメント左端の香織と右端の楓の決戦である。


◎楓は一回戦で日本将棋連盟の女流棋士ではないFWSP所属の女流棋士 渡瀬 晴とぶつかる。

 これの元ネタは何かというと事の発端は「女流棋士独立問題」ですね。これについてはググると色々当時の経緯が出てきます。そんで日本将棋連盟から独立したのがLPSAです。LPSAは独自基準で女流棋士を誕生させるのですが日本将棋連盟は「将棋連盟のルール、すなわち研修会でC1以上じゃないと認めない」と言います。そこでLPSAと将棋連盟は真っ向からぶつかり、LPSA所属の渡部愛女流は困ったな~という感じになりました。おそらく漫画に登場する渡瀬晴の「渡」はそっからきています。ちなみに渡部女流は将棋連盟から出された2013年7月12日 LPSA、渡部愛さんへの対応についてで、将棋連盟ルールの女流3級と同等として大会に参加することが出来るようになりました。渡部女流は今でこそタイトル獲得経験者ですがなりの苦労人なのです。

 

◎香織の1回戦は貝原奨励会初段。

 

 勘が良いのが特徴。香織は強さを手に入れるため男性棋士に手を出していたが、それを知って貝原も同じ男に手を出す。それをあえて対局中にカミングアウトして心理戦に引きずりこむ!


えーと…これの元ネタは何なんでしょうか?(笑)


狭い将棋界なのでふつうにありそうでう怖いですが私には分かりません。

誰か教えて…くださらなくても良いです、知ってはいけない気がするので(笑)

 

とまぁそんな感じでこの先の展開が楽しみだったのだが

 

打ち切りになってしまったぁぁ/(^o^)

 

結局、楓と香織の対局は実現せず、そこが一番の見どころなはずなのになんてことだ…。メッセージ性の強い作品なだけに打ち切りは残念です。


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あべしん

・アマ五段(県竜王戦優勝)の四間飛車党
・中学、高校、大学、社会人で県優勝
 →全国大会出場
・地元紙で将棋の観戦記を書いてます
・連絡先→kouteipengin6@gmail.com

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