将棋漫画『永遠の一手ー2030年、コンピューター将棋に挑むー』を読んだらソフト使っても勝てない人の理由が分かった

作品名:『永遠の一手ー2030年、コンピューター将棋に挑むー』上・下巻
ジャンル:コンピューター将棋との付き合い方
原作  伊藤 智義
漫画:松島幸太朗  出版社: 秋田書店(少年チャンピオン・コミックスエクストラ)
発行日:2017年1月6日
販売価格:648 円(電子書籍:583円)
 

登場人物:増山 一郎(ますやま いちろう)

□感想&あらすじネタバレ注意!

1話「将棋界崩壊の日」が全てのスタート。

 

時は、2020


羽内「名人」 vs コンピューター日本一「彗星」の公開対局が世間の大注目を浴び行われていた。

 

将棋連盟としても羽内名人なら勝てるという算段で開催したのだが…。


はい。

それまでのソフトであれば過去の棋譜に基づいて最善手を導くだけなので、定跡に囚われず新手を指せる羽内名人が圧倒的に強かった。

 

しかし…


「彗星」においても、過去の棋譜をもとに新手・新構想を独自学習できるプログラムが仕込まれていたのだった!

 

すると、どうでしょう。

 

名人が負けちゃいました!


ー将棋界終了のお知らせー

 

「彗星」のプログラマーは、

 

「こんなはずじゃなかった。好きな将棋を自分のソフトでどこまでできるか試したかっただけなのにとんでもないことをしてしまった…」と激しく後悔。

 

以降、プログラマーは姿を消して、名人は引退。


飯田棋士・教授の講演思い出した→2017.9.1【飯田教授】「将棋と人工知能」講演


それだけでは収まりがつかず、

 

プロ棋士の権威失墜、七大タイトル戦はスポンサーがつかず廃止。

以後、将棋の人気は急落する。


そこで将棋連盟は3つの改革案を提出する。


そのひとつで2026年以降は、棋士+ソフトのタッグ戦(対局中はソフト使用不可)で名人を決めることとなった。

 

しかし、予想に反して名人戦で優勝したのは無所属でソフトと組まない増山だった。

  

ようするに、コンピューターが創った人智を超えた必勝定跡丸暗記に精一杯になりすぎて、棋士達の地力が退化していたというね。


学校の勉強も意味がわからないまま丸暗記するとその通りの出題なら正解出来るけど、ちょっとひねられたり、同じ内容でレベルが低い内容を出題されても基礎力(地力)が無いから対応できない現象のアレです。

 

結局、ソフトは地力が強い人間が使わないと危険!という話になるのです。これは私も常々言ってきたこと。この漫画はそうしたソフト病にかかっている人へのヒントになると思う。


二巻では、ソフトとのタッグに耐えうる強い男が登場。


かつて自分を負かした「彗星」と手を組み、増山名人に挑む。

 

さぁ、無所属棋士 増山名人、どうなるのか。


最後は意外と漢同士の戦いだ~的なノリで私の頭の処理速度も追いつかなかったりしましたが面白かったです。


この漫画は、ソフトばっかり使って全然力がついていないのにそれに気づいていない棋友や子どもさんにそっと「お薬です💊」と言って手渡すのが良いと思います^^

 


□私の覚えている人類vsコンピューターの記憶

2010年 清水女流2冠(当時)が「あから2010」に負け。

2012年 第1回将棋電王戦〈株式会社ドワンゴ〉
米長邦雄会長(当時)が「ボンクラーズ」に負け。
会長の△62王作戦、良かった!

プロ5名vs世界コンピューター選手権上位5名
 →1勝3敗1分け
阿部光瑠四段(当時)の勝ち・塚田九段(当時)が地将棋で引き分け。

第2回は画面にかじりついて見ていた!自分の中で一番アツかった時期。阿部光瑠四段はさすが勝つんだな~と感心した。塚田九段の入玉も感動した、正直負けると思っていたのであそこから入玉にもっていったのは人間の恐ろしさを感じた。ワクワクさせてもらった。

プロ5名vs世界コンピューター選手権上位5名
 →1勝4敗
豊島九段(当時)が勝ち。

前回より明らかに強いメンバーで臨んだのだが初戦菅井先生が負けたのをみて菅井先生が負けたのではなく振り飛車がダメなのかなと激しく思った。そして途中からこの棋戦、結果が見えたような気がして興味を失った。もう人間じゃ勝てないんだな~と結果だけ確認する感じになった。

プロ5名vs世界コンピューター選手権上位5名
 →3勝2敗。
齋藤慎太郎五段(当時)・永瀬六段(当時)・阿久津八段(当時)が勝ち。

対戦ソフトを貸し出すというルールになりました。
実力では正直勝つのは厳しいので事前研究で何かバグを発見できればプロも勝てるかもという展望。2-2で迎えた第五局、阿久津八段が元奨励会三段のプログラマー巨瀬さんの開発したソフトの欠陥をつく手で勝利!あぁ、これぞ人間vsソフトの真骨頂やなと思いました。その将棋に対する世間の反応はこちらの記事にまとまっています。参考記事→電王戦FINAL、AWAKE開発者・巨瀬亮一さん「ハメ手を使うプロ棋士の存在意義」を問う 個人的に阿久津八段支持、あれが2-2じゃなくて人類の勝ち確定している状態だったら違ったかもしれないけど2-2はもう勝つしかない。プロとしてのプライドがとかエンターテイメントがとかそんなものよりもまず勝つしかない局面だったと私は思う。

2016年 第1期電王戦
山崎叡王(当時) vs PONANZA 
→PONANZAの2-0勝ち。
もはや見ていない、ファイナルで完全に冷めた。

2017年 第2期電王戦
佐藤天彦名人・叡王(当時) vs PONANZA 
→PONANZAの2-0勝ち。
漫画と同じで 名人が負けた!
ただし、そこまで世間的にショックは無かったと思う。
これはつまり、現実世界の将棋ファンの方が賢かったからである。
また、将棋ファンの関心が棋士の強さ個性に移っていたからというのもある。

もっと詳しく知りたい方は→コンピュータ将棋 wiki

関連記事

コメント

非公開コメント

あべしん

・アマ五段(県竜王戦優勝)の四間飛車党
・中学、高校、大学、社会人で県優勝
 →全国大会出場
・地元紙で将棋の観戦記を書いてます
・連絡先→kouteipengin6@gmail.com

全記事表示リンク