里見女流は過去奨励会三段にリーグに在籍しており男性含めてのプロを目指していたが昨年3月に年齢制限による退会で女流棋士となった。
奨励会退会後はプロ棋士への道が閉ざされたかと思いきや、男性棋士相手に直近9勝5敗。あと1勝で男性も含めたプロの編入試験の権利を手に入れるところまできたというのがスポーツ報知の内容です。
う~~~ん、正直この手があったか!というのが率直な感想。
プロ棋士になるには、基本的に奨励会三段リーグを抜けなければいけない。これが地獄のようなリーグ戦で過去幾人もの有望な若手達が去っていった。
しかし、2006年に元奨励会三段で会社員だった瀬川晶司さん(現六段)が特例でプロ編入試験を受け合格。瀬川六段の自伝をまとめた『泣き虫しょったんの奇跡』は映画化までされています。
その後、プロ編入試験が整備され2014年には元奨励会三段で介護士だった今泉健司さん(現四段)も合格を果たしている。
詳しくは今泉プロの著書『介護士からプロ棋士へ』をどうぞ。
ここで整理。
アマがプロ棋士になるには・・
1、奨励会三段リーグを年齢制限まで抜ける。←一般的。
2、主要アマ棋戦で全国優勝して奨励会初段or三段リーグ編入試験を受ける。受かっても結局地獄の三段リーグを勝ち抜かないとプロにはなれない。
3、プロ編入試験を受ける。
主要アマチュア棋戦で好成績を収めるとプロ棋戦への出場権を得られる大会がある。そこでプロ相手にいいとこどりで10勝かつ6割5分以上の成績を収めるとプロ編入試験の受験が可能になる。合格すれば地獄の三段リーグを戦わずにプロになれてしまう!
『将棋を指す獣』1巻129ページのコラムでは、実際に編入試験を経てプロになった監修の瀬川六段が「試験単体ならプロ編入試験の方が難易度は低いと思うなぁ」と語っています。
というのも過去に三段リーグ編入試験を経由してプロになった人は一人もいない、『将棋を指す獣』1巻第2話には【可能性0%】というタイトルがつけられています。
2014年にプロ編入試験を受けてプロになった今泉四段ですら三段リーグ編入試験には受かったものの期限内にそこを抜けられず2009年には2度目の三段リーグ退会をよぎなくされている。
三段リーグは誰と当たっても現役ばりばりの若い才能あふれる子達を相手にしないといけないので非常に大変で1勝に貪欲な世界と言える。
その点、プロ編入試験を受験するための条件はプロ相手に10勝かつ6割5分が必要。そこから棋士番号の若い順に5名と戦い3勝すれば合格、晴れてプロとなる。一見すると奨励会三段よりもプロ(四段~)の方がきついのではという印象を持たれる方もいると思うがそうでもない。プロの中には『リボーンの棋士』2巻に出てくるようなやる気のないベテラン棋士小関さんみたいな方もいるのでそこと当たれば現役奨励会三段と戦うよりも勝つ可能性はある。そもそも最近は…持ち時間の短い棋戦が増えたのとアマのレベルが上がったせいで有望な若手プロでも負けたりするんですけどね。
ただ、瀬川六段が「試験単体なら」と言っているように試験全体で見るとプロ編入試験に行きつくまでの難易度が高いと思います。そもそも、アマはプロ棋戦出場枠を手に入れるのが大変ですよね。これについては、令和元年6月20日発行の支部ニュース6Pで渡部記者が人気Youtuberであるアゲアゲさんを例に同様の事を記しているので読んでみてください。
今のアマチュア大会は元奨励会の方もだいぶ多く参加している。純粋アマでもオリンピックを目指す選手と同様に仕事を調整して将棋に打ち込んでいるという例も少なくはない。これはもう、一般のアマからしたら上の強さが見えない状態です。
しかし、今回の里見女流の件は盲点でした。
女流でトップになることが何を意味しているかというと、活躍に応じて男性プロ棋戦へ出場出来るということなんですよね。
つまりそこで男性棋士に勝てばプロ編入試験への道が開けるということ、あぁ素晴らしき展望です。瀬川六段の言葉を借りれば「試験単体なら三段リーグを抜けるよりプロ編入試験の方がハードルが下がる」わけなので、これは本当に女性初のプロ棋士が誕生するのではないかと思っています。
里見女流がプロ編入試験を受けるかどうかについてはご本人の意思はどうなのか分からないので何とも言えないが今後このルートが脚光を浴びる事は増えてくると思う。
ということであれば、本気でプロを目指して届かなかった女性が女流棋士となる事例が増えてますます女流棋界のレベルは上がっていくと思う。
【救済ではなく才能発掘のためのプロ編入試験?】
そういえば『リボーンの棋士』3巻で中学生が大人も交えた全国大会の決勝に上がってくるシーンがある。もしこの子がプロ棋戦の出場権をGETして、勝ちまくってプロ編入試験を受けて合格すれば中学生という若さで奨励会を通さずにプロになれてしまう。奨励会は基本的に6級で入会して毎月の例会を経て昇段を繰り返して三段リーグを戦いようやくプロになれる世界。その過程を省略できるのはある意味コスパが良いな~という印象。真面目にやっている奨励会員達が浮かばれないじゃないかと一瞬思ったがこれは将棋連盟の才能救済制度なのかなと思ったりもした。
正直なところ失礼な言い方だが、年齢を重ねてプロになったとしても感動はあるかもしれないがプロとして棋界に名を轟かすような活躍はなかなか厳しいと思う。
(厳しいだけで、現在進行形で活躍している先生もいますけどね 笑 )
この世界は若くしてプロになってどこまでいけるかという考え方もある、それは別に将棋に限らずどの競技でも同じだと思う。
1つの指標として中学生で棋士になることが出来れば棋史に名を残す活躍が期待できそうである。
・加藤元名人→14歳7ヶ月
・谷川永世名人→14歳8ヶ月
・羽生永世7冠→15歳2ヶ月
・渡辺永世竜王→15歳11ヶ月
・藤井聡太七段→14歳2ヶ月
しかし!
小学校高学年や中学生になってはじめて奨励会を目指そうと思うと、仮にその年に奨励会に受かっても中学生棋士の実現は現実的に厳しいところがある。だから最近は低学年のうちに奨励会に入れるという傾向が強いのかなと思う。
なので、プロ編入試験は奨励会の年齢制限を越えた人の挑戦を待つと同時に若い有望な才能を拾う機能も備えたありえる制度だなぁと思っています。(現役奨励会員がどう思っているかは心中察するけど)
このプロ編入試験という制度が今後どのように使われていくかは要注目です。
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