ツイッターで大学生の方から棋譜添削の依頼があったのでやっていきます。
棋力は24R1400点台(リアル道場では3段)でまだまだ伸びるところだと思います。
添削する棋譜は、将棋倶楽部24で相手の方も1400点台との事。
後手が依頼者さんで△43銀型三間飛車です。
あらかじめ質問事項3点頂いていたのでそこから答えていきます。
本局は上図以下、△63銀から雁木という現代流の駒組みになりました。
対三間にトーチカ(ミレニアム)はやや損と昔は考えられていたのですが最近は何でもやってくる時代です。
上図以下、目障りな角を△65歩と追い払ってから△54銀と出る。
以下△45歩・△35歩と位を張り石田流を目指す。
印象としては後手うまくいっていない感じ。
コンパクトにまとまっている先手陣に対して、後手は65歩+45歩+35歩と位を取りすぎている。先手はこの3つの位に反発する楽しみがあるので後手非常に勝ちづらい展開だと思う。これについては最後に取り上げます。
進んで下図、ふらふら出てきた▲84角を△75歩で閉じ込める事に成功。
ここでは、後手やや優勢。
以下、▲85桂、83歩、73桂成、同金、同角成、同王で質問1へ。
☆質問1
・63手目に16飛車とされた局面での今後の方針の立て方はあるでしょうか。
これは後手勝勢に近い局面です。
▲16飛は次に▲26桂と打って飛車を狙いにきた手と思われます。
依頼者さんは以下△25桂、同桂、24飛とその筋を避けました。
この展開でも後手悪くはないですが桂損したのはなんとなく嫌です。
もっと良い手は無いんでしょうか。
再掲下図。
もう一度考えてみましょう。
局面の急所は…本当の所どこなんでしょうか?
先手玉は鉄壁、特に78金+79金+68銀のカタマリは二枚飛車+と金一枚くらい作らないと崩せません。それは非常に現実的ではないので別の攻めの構想を練るらないといけません。
先手王の急所はどこか?
1つだけ薄いところがあります。
それが!端、具体的には99の香車です。
ここを△44の角でくいちぎる手は駒損ですがそれ以上の価値がありそうです。
そういう大局観で臨めば、新しい発想が浮かびます。
▲26桂打たせてもよくね?
だって打たれた瞬間に△99角成、同王、44飛とすれば飛車は助かるし99の香車を削って先手陣を弱体化できる、打った26の桂馬働かないじゃん!
⇓
むしろ▲26桂打ってほしい!笑
打たす手を考えよう。
⇓
そうだ、△38角と飛車取りに打てばいいのか!
と正解に辿り着けるわけです。
上図以下、△38角、26桂で下図を見てみましょう。
この瞬間に△99角成とスパークして・・・
▲同王に44飛と寄る。
16の飛車を取る手が後手には約束されています。
さらに9筋攻めという分かりやすい攻めもあるので後手が負ける事は無さそうです。
99の香車と角を刺し違える事に駒損以上の価値があることに気づけばこの順の発見は容易だったと思います。局面の急所、大局観を磨きましょう。
☆質問2
・79手目に43金と指された際に実践的に勝ちやすい局面に持っていくにはどう指せばいいでしょうか。
なるほど。
「実戦的に勝ちやすい局面に持っていく」という大局観がまずいかもしれません。
上図はすでに後手相当苦しいので…。理由は、先手の王様が未だに堅いという点です。
対して後手王はまだ大丈夫なようにみえて相当危ない、次に▲58飛と回られると先手の遊び駒がなく後手敗勢かもしれない。
上図の急所はやはり端、9筋を攻めるしか勝つ道は無い。
私なら勝負手で1回は△95歩と突く。
これを▲同歩なら、△98歩と打つ。
ありえない話だが▲同香なら△43金、同成桂、99金で詰み。
なので98歩には同銀と対応するはず。
それには△86桂と打つ。
こうなれば攻めが筋に入って後手良しでしょう。
ただし、△95歩の瞬間に・・・
▲58飛と回られるときついですね。
以下、▲99馬、同王、96歩、53金、同金、51角があるので…
後手勝てません。
かといって、再掲下図以下・・・
・△64馬は、76桂、75馬、86銀打でひどい。
・△33馬は、同金、96歩、98歩で冷静に悪い。
・△56桂は、同飛!、同馬、44桂、51金、25銀、96歩、24銀、97歩成、同香、同香、92飛でギブアップ。
よって、質問図⇓はかなり後手が悪いと言えそうです。
やはりこうなる前に先手陣の9筋から嫌味をつけておかないといけないですね。
☆質問3
・99手目に77桂と指されたときは優勢になっていると思いましたがヨセの構想が立ちませんでした。どのように勝ちにまでもっていけばいいでしょうか。
上図の質問図は「寄せの構想」どころか「詰み」ですね(^-^)
以下、△75金、同王、74銀、64王、54金までの5手詰です。
実戦ではこのようなベタベタ打って詰ます筋は頻出です。
逃さないようにしましょう。
さらに下図。
ここで本譜△75歩と取り込みましたが・・・
これはやってはいけない手です。
(局面自体は後手勝ちですが。)
次に△76歩と取り込んでも王手にならないので先手王は詰まない、すなわち1手パスなんですよね。再掲下図では少なくとも次に詰ますぞ!という手を指さないといけません。
99竜が本筋です。
次に97竜(馬)からの詰みで明快に勝ちです。
☆あべしんの目
序盤の構想についてです。
ここは後手作戦の岐路。
1、本譜△63銀からの雁木。
2、△35歩からの石田流。
この2つを見ていきます。
1の雁木ですが・・・
個人的に△65歩+54銀という組み合わせがイマイチだったかもしれません。
本譜の展開のように雁木+石田流の将棋を目指したときに・・・
雁木である意味が無いからです。
雁木は上から押しつぶす戦法なので(後手から見て)右辺に負担がかかります。
石田流は横から捌く戦法なので左辺に負担がかかります。
上の陣形は、左右どちらにも負担がかかっているので振り飛車のバランスがおかしいです。
したがって、
・右辺に負担がかかる雁木ならば引き飛車(32飛の位置)にして左辺の負担を減らす。
・左辺に負担がかかる石田流であれば王様はしっかり金銀4枚の美濃囲いにして右辺の負担を減らすべきです。
◎雁木+32飛作戦の課題
石田流にしないのであれば△65歩と突く必要もありません。
△54銀と出て角頭にプレッシャーをかけにいきます。
先手は淡々と王様を固めます。
雁木の陣形から仕掛けるとどうなるか。
以下、△65桂。
△65歩を保留した意味がこれです。
以下、同桂、同銀の展開は玉頭を狙えるので後手も雁木に組んだ甲斐があったなぁという将棋。
しかし、上図から△85桂の跳ね違いがあります。
次に▲93桂成と▲48角→▲66歩の桂殺しが受からずに先手良し。
△65桂作戦は失敗でした。
第2の手段、みんな大好き地下鉄はどうでしょうか?
次に▲81飛→84歩みたいな展開になれば後手も十分やれそうです。
しかし!これには▲48銀型を活かして▲57角がぴったり。
次の▲24歩を受けるには△32飛しかなさそうですがそれではおかしい。
地下鉄構想も破綻します。
駒の効率を考えると下図の構想はありえる。
これであれば後手の角が使える位置です。
ただし、△65歩の位が負担でいつ▲66歩と奪回されるか分からないので後手を持ってあまり良い気はしないですね。
現段階では、66角型のトーチカに対して三間飛車雁木でのうまい指し方が分からないというのが私の結論です。
しかし、別に分からなくていいと思っています(笑)
というのも・・・
⇓
◎スタンダードな石田流←有力
普通に35の位を取って、金銀4枚の美濃囲いにする構想が優秀だからです。
これについては、shodanミレニアム博士のこちらの動画で研究してください。
四間から1手損して石田流に組んでもいい勝負なのだから、手損無しで石田流に組むのであればそれはもういい勝負(笑)だと思います。振り飛車の王様も堅いし雁木よりこちらをお勧めしておきます。
☆お悩み相談
自分は今の棋力帯で3~4年停滞しています。そのためどうしたら強くなるのかわからなくなっています。強くなりたいという気持ちはあります。しかし結果が出ないという状況です。どうしたらよいでしょうか。抽象的な質問で申し訳ありません。
→棋譜を見た感じだと、まず終盤が課題と感じます。
基本的な終盤の手筋・考え方を習得していない状態だと思います。
これに関しては、努力すれば必ず誰でも身につきます。
現在の勉強法は、棋譜並べと実戦との事でしたが、詰将棋も取り入れてはどうでしょうか。
最近では『妙手に俗手、駒余りもあり!実戦詰め筋事典』が良い意味で実戦向きかつ詰将棋っぽくないので評判が良い本です。
また、自分の指した棋譜があれば将棋ソフトなどを使って勝ちあるか、詰みがあるかを検討するのも効果的だと思いますよ。
棋譜並べをしているとの事ですがプロの棋譜の投了図以下を検討した事ありますか?私はなんで投了したのか分からない時の方が多いです。しかしよくよく調べてみると長手数の詰みがあったりするので勉強になります。プロはそれを当たり前の筋として認識しているのでやった方がいいです。将棋ソフトがあれば検討も楽になるので買った方がいいです。
あと、道場などで指す場合も、勝ちの局面でも緩めずに「最短で勝つ」という意識を持って指した方がいいと思います。この局面は、大差なので詰まさなくても詰む~とかではなく、詰みがあるなら詰ます!みたいな感じで日頃から自分に負荷をかけてやっていくといいと思います。
とにかく、一定期間「終盤の鬼」になってみてください^^
以上、こんな感じです。
ありがとうございました。
- 関連記事
-
コメント