※2019年1月7日追記
→長岡さん本人からこの記事を読んでの解説をコメント欄に頂きました!!
プロレス技の解説もありました、ありがとうございます。
そして2019埼玉GC優勝おめでとうございます、すごい~。
なお、優勝した長岡選手の心境はこの動画の30分40秒あたりとの事でした。
インタビュアー「今の率直な気持ちをお聞かせください」
三沢「嬉しいです」
インタビュアー「今日のジャンボ選手はどうでしたか?」
三沢「強かったですね」
インタビュアー「この一戦臨むにあたって自らの作戦は何だったんですか?」
三沢「作戦は無かったです。絶対負けてたまるか、それだけですね」
インタビュアー「正直言って大方の予想はジャンボ鶴田だったですけど」
三沢「そうでしょうね、周りの人にそう思われていて、そうはいくかという意地もあった。だからいい意味で自分の意地が試合中に持てたという事が嬉しかった」
\(^o^)/
将棋は技術もそうですがガッツ・根性・メンタルが大事だと思いました。
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これは長岡さん自身のベストバウトという事で拝見したらものすごい熱戦譜だったので当ブログで紹介させて頂きたいと思います。
2001年1月28日、大宮中央デパートで行われた「彩の国名人戦」決勝です!
先手が長岡さん、後手は全国優勝複数回の強豪の方で私も広瀬プロと共著した本は持っております。
戦型は、後手の四間穴熊に先手長岡さんの居飛車穴熊。

ここから先手が動きます
以下、▲35歩。これは△同歩なら▲56銀で桂馬を使って攻めていこうという意味かと思います。
こうなれば先手がよさそうなので▲35歩には手抜きで△75歩と突っかけます。
▲同歩は、△76歩と打たれて33の角が55に出れるので後手良し。
そこで、▲26飛と浮くのが筋。
上図以下、△46歩がまた筋。
26飛の横利きを遮り7筋を取りこもうという手。
上図以下、▲同銀、76歩、95角!
7筋に拠点を作られてあひゃーと思いきやこの▲95角が△62金型を直撃する飛び出し。
いつでも切る筋があるので後手は△72金寄と四角い穴熊を完成させる。
ここらへんはすごい綺麗な手順なんですが定跡なんでしょうか?
四間美濃が専門なので穴熊はよく分からないですね~。
さて、形勢はどうなんでしょう。
手番を先手に握られるているのでしばらく後手が受ける展開になりそうですが、王様の堅さは後手+7筋に拠点があるので実戦的にはいい勝負なのかなという印象です。トップクラスの将棋は簡単に負けないように主張点があるのが見逃せないポイントですね。
上図以下、▲34歩から24飛と走るコースで戦いが始まりました。
進んで下図。
63の金取りですが62金引だと食いちぎられそうで1手の価値があるのか微妙なところ。ただどう受けるのかと思いきや・・・
△62飛!でした。
なるほど~穴熊戦はこう指すものなのか!
馬と飛車を交換すれば金2枚残るので堅さは維持できますからね。
かといって、金をとるようだと飛車の守備力が高く先手が攻め切るのは大変そう。
これは困ったのではと思ったんですが・・・
毒霧が飛びました!
んんん~~???
悩ましいです。
私なら何も考えず同金と取ってみたいのですがどうなんでしょう。
本譜は驚きました。
上図以下、△52飛、71歩成、同銀。
金は金でも71の金を取らせるとはぁぁぁ。
ここらへんは読みを入れないで直感で形のいい将棋ばかりを指している人(私)には理解出来ないところ。これで攻めが切れていたらすごい受けだったのですが長岡さんの次の1手が脳天唐竹割りでした。
▲54銀!!
盤上唯一の拠点に46銀が生きているうちにかちこみます!
・△同金には、同歩、46と、53歩成(同飛は64角)で先手の攻め駒が1枚増える。
・△73金には、74歩、72金、63金で7筋に拠点を作って攻めが続きそう。
本譜は、△62金だったので▲63金とかぶせて一気に先手ペース。
そして下図。
ここからの寄せが参考になります。
以下、72歩(銀2枚の連結をほどく)、同銀、32飛、42歩、82角成(王様を引っ張り出す)、同王、33飛成で下図。
先手の穴熊の堅陣が残りはっきり勝ちのような気がします。
上図以下、△57と、78金寄、67と、同金、75桂。
将棋は本当に恐ろしいです。
こっから一路間違うだけでおかしくなるので。
以下、▲64桂。
棋譜コメントにもありましたがここでは▲74桂で明快な勝ちでした。
上図以下は、△67桂不成!、72桂成、同王、74銀、43桂と進み粘られています。
局面自体は先手勝ちなのですが、先手も勝ちにいくとなると駒を後戻り出来ないくらいぶったぎって必至または詰みに討ち取らないと形勢を損ねてしまうので勇気がいります。
秒読みの中でどう勝ちにいくか、実戦的には相当先手も嫌な感じです。
進んで下図。
先手の攻め駒が一掃されてしまいここでは後手優勢に。
トップクラスの将棋でもこうなっちゃんだなぁと。
下図。
ここで先手から駒を補給する好手が出ます。
以下、55金。
同桂なら同龍で十字飛車。
まだなんとなく後手良さそうですが盤上の駒が少なすぎてどう受けたらいいかちょっと分からない。
駒落ちの王1枚vs平手みたいな将棋になっている…。
上図以下、42王、44金、35銀。
ここでは▲43金、同王、35竜があったようですが、実戦はぐいと45歩。
う~~ん、かなり精神的に消耗した戦いになっていると思われます。
進んで下図。
角2枚と飛車が穴熊を直射して怖い局面。
以下、51銀不成。
この局面はどうなんでしょうか。
例えば、△79飛成、同龍、88角成、同龍、同角成、同王の局面は・・・。
先手王に詰みは無さそうですね。
したがって、再掲下図以下…
△44銀と金を補給。
44銀が33に効いているので▲42銀不成と踏み込んで負けたら夜も眠れません。
しかし次の1手が手堅かったと思います。
以下、▲77金が角の額を割るような受け。
(残念ながらプロレス技の喩えが出てきませんw)
がつーんと埋めて穴熊の堅さをキープ。
私は、地元山形県酒田市の「さわやか金龍」のボトルをキープ。
金→竜→金という穴熊はなかなかお目にかかれないですね。
万が一にも負けられないという気迫が伝わってきます。
そこから40手以上の攻防があって下図。
なぜか左にあった穴熊が右に再生。
なんちゅうタフさや・・・と思いましたが、
223手で先手長岡さんの勝ちとなりました。
◎感想
個人的に79手目の毒霧攻撃が本局の分岐点なのかなと思っています。
同金なら後手の堅さはキープされたままですので薄さに苦しむ本局の展開にはならない気がします。
1局を通じて、形勢云々よりトップアマ同士の技術を越えた精神力・パワーに感服いたしました。どちらかが弱ければすぐに終わってしまう将棋ですが実力伯仲だとここまで激戦になるものなんですね!
なお、決勝を勝たれた長岡さんはこの年、全国アマチュア名人戦(H13年)でも優勝するのでした~~。
ぱちぱちぱち。
2019年、再び全国制覇される事を祈っております。
「時をかける長岡さん」でお願いします!
また、超強豪同士の熱戦譜に関しては、埼玉県連HP様の「特選譜」のカテゴリから見る事が出来ますので興味ある方はどうそ!!
以上でした。
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コメント
長岡
①▲3五歩△同歩の変化…当時はどう考えていたか覚えていないのですが今見ると▲2六飛と浮きたいですね。で次に▲5六銀ではなく、▲7八金寄~▲6八銀と固めてから▲5四歩と仕掛けて…と書いてて気づいたのですが▲6八銀の瞬間広瀬本にある△4四飛がありましたか。そうすると▲6八銀のところで解説どおりに▲5六銀ですか(成程)ただ図面を掲載いただいて気がついたのですが▲1六歩とついたてが1手パスのひどい手になっていますね(▲2四歩△同歩が入っているのであれば▲9六歩よりはましかもしれませんが(端を攻める展開になるとは思えないため)なくなられた芹沢先生に見つかると大変なところになるところでした(芹沢先生は昔はやっていた矢倉24手組みをノータイムでさすとお怒りになられたそうです))
②お褒めいただいた▲7二歩に△7二同金の変化…正しくは▲6二馬△同金引と進めるところかもしれませんが、実戦なら間違いなく▲7三歩と連打していると思います。同金上(寄でも)にそこで▲6二馬△同金となれば金が離れているため単に取るより数段得ですし、△5二飛と馬を取れば▲7二歩成△同飛▲5四金と本譜のように進めば相穴熊の将棋だと実戦的には居飛穴必勝形ではないかと思います。(このあたりの感覚はソフトも苦手にしていると思います)あと、この2手の歩の攻めはプロレスの技で言うと三沢光晴さんの‘エルボー’ではないかと思います▲7二歩が‘エルボー’で▲7三歩が‘ローリングエルボー’(このとき体を回転して打ち込むのがポイントです)
【この形の現時点での私の見解】
なんか何かいているかわからなくなってきたのですが、18年たつと私も少し研究しまして、今ならこうは指さないですね。正しくは‘元奨励会員アユムの将棋研究ブログ’にある http://ayumushougi.com/4aiana/369/ではないかと思っています。ここにたるまでの手順が複雑なのですが、私の将棋でいうと6九の金を7九に寄った手で正しくは6八の金を7八に寄って△4五歩と突かれたら▲6八角と引いて受ける形にするようです。金は離れていますが角切りを避けている意味もあり一理あると思います。
P.S 毎回長文で申し訳ありません。実は本日行われた埼玉県GC戦で優勝することが出来ました。これも貴ブログの記事や他県でありながらアンケートを書かせていただきどうすれば棋力向上につながるのか自分なりに考えるきっかけを与えてくれたからだと思います。(木村義雄実戦集は実家から取り寄せただけで当然並べるところまではいってないのですが)分厚い本を眺めているだけでも違いますね。中央の厚みが段違いなんですよ。今日指した4局中1局懸案となっている相掛かりを指したのですが(この前連敗して川越支部代表になった方です)何と飛車角金銀銀桂の手厚い攻め(結局金は自陣の2枚を取らせましたが)変化の読みも完璧で圧勝することが出来ました。今の私の気持ちは以下で三沢さんが語ったとおりの心境です。
https://www.youtube.com/watch?v=6e4Jx_ST36s
長文失礼しました。
2019/01/07 URL 編集
abcn
お世話になっております。
まずは埼玉グランドチャンピオン戦優勝おめでとうございます。
強すぎます。
プロレスの動画については30分40秒らへんからのインタビューをこの記事に追記しました。
面白かったです!
そして本人直々の解説でこの記事も手厚さが増しました。
① 26飛浮きは筋と思いましたが味わい深すぎてそのあとどうやって手を作るのか不明だったので分かりやすい56銀を本線に選んでみました。そしてご指摘の手順は本当に味わい深いです(笑)。
広瀬本は結構前の本だと思うのですが覚えているんですね。
ちなみにですが「将棋 長岡」でネット検索すると、長岡さんが『米長の将棋』の米長vs桐山戦と同一局面だと指摘した、記憶力すごい!というエピソードが出てきます。
芹沢先生は1手の1手の意味を大切に考えよと、そう指導されていたんでしょうか。
素晴らしい先生だと思います。
②エルボーからのローリングエルボー
72歩は毒リンゴ~だなという意味で毒霧とさせていただきましたがそこはエルボーからのローリングエルボーが正解なんですね、勉強になりました。
1発目、ビシ!「なんだこれは!」
2発目、ビシシ!で頭が真っ白になって対応間違えそうです、私は。
なお、変化手順についても読ませていただきました。
実戦的に終わっているというやつなんですね・・・そういう体で覚える技をたくさん身につければ私の勝率も上がるのかもしれません。
なお、アンケートから埼玉GC優勝まで期間が短すぎるので真の結果が出るのはまだ先かと思われます!木村名人の棋譜並べもされていないようですし(笑)。さらに良い知らせを期待しております
2019/01/07 URL 編集
長岡
あとお褒めいただいた米長の将棋についてですが、これは一昨年まであったニコニコのコンピュータに勝ったら100万円(以上)の企画で指された東北の枠を超えてトップアマとなったK5さん(がんばってプロになってください、応援しています)が指した将棋でその将棋が米長の将棋第2巻で指された▲桐山八段vs△米長八段戦と先後逆(先手の中飛車→向飛車と後手の向飛車で手数は一致しています)ですがコンピュータが△9四歩にK5さん▲9六歩と受ければ過去に1勝を挙げ100万円獲得しているだけに米長の将棋を知っていれば勝っていたのではないかと、現地で見てて思ったのでライターのmtmtさんに言ったのがアベシンさんの見たインターネットだったと思います。昨日長々書いた将棋以外の3局は‘加藤一二三のプロの三間飛車破り’~北島七段の相穴熊の本~決勝の将棋は村山七段のNHK講座をまとめた居飛車対振飛車の本と同一の将棋となり最後の将棋以外は、変化が思い出せなかったり、本には書かれている手は覚えているんですが、自信が持てず違う手をさしてしまいましたが、今までやってきた研究が少しづつ当たりだしてきたように思われ結果的に優勝という形で報われた気がしました。これもアベシン先生のおかげだと思っています。またしょうもないこと書かせていただきますので、その際はご勘弁ください。なかなかまとまらず今日も失礼いたしました。
2019/01/08 URL 編集
abcn
棋書は発売当時はみんな読むけどもだんだんと内容を忘れていく傾向にあると思います。
また、若い世代にとっては絶版になった本というのは触れる事すらないものです。
昔読んだ本の内容を数年・数十年というスパンで覚えている事は恐ろしい武器になると学ばせていただきました。
歳を重ねるとどうしても全盛期と比べ瞬発力は落ちると思いますが記憶力が良ければ積み重ねた知識が武器になるので長岡さんのように長く活躍する事が出来るのかもしれませんね。
ありがとうございます、また気が向いたら書き込んでください。
2019/01/08 URL 編集