「よく考えてから指しなさい」
早指しの癖はなかなか抜けないもの。
やっと考える癖がついてミスが減ってきた~と思ってもまだ危ない。ふとした瞬間に手拍子で指している人多し。当然の一着、考えるまでもないという手が実は悪手だったという事は多々あること。
アツい局面になると感情がほとばしって考えずに指すのは大人も一緒。
ただ、そうならないように自分をコントロール出来るかというのは上達する上で必要な技術だと思うよ。
駒が曲がっている人や手で駒を隠す癖がある人に「やめろ」と言ってもすぐには治らない。治療法は1つ、普段の練習からしっかりやることです。
感情をコントロールしてしっかり考えて指す癖をつけるようにしましょう。
そんで、こっから上達理解編。
そもそもなぜ時間を使わないといけないのか。
ケアレスミスをなくすためです!
→確かにそれが無くなれば成績も向上しますよね。
では時間を使う事はケアレスミスを無くすためなのか?
いえ、強くなるためです!
→おお。わりといい線いってるね。でもなんで時間を使うと強くなるんだろう。
・・・。
こっからは、私の仮説を語るよ!
持ち時間20分30秒で対局したとしよう。
学年も上がれば20分は当然使い切るわな。
しかし、秒読みに入ると野生に戻って10秒程度で指しちゃう子が多い。
秒読みってさ、対局時計がピッピッピと鳴るし、形勢は混沌としているしで精神的にきついですよね。良い手が見つかれば早く指したい!決めたい!という感情も沸いてくる。自分の手番で、短い時間内に手を選択しなければいけないというプレッシャーは相当なもの。
そこから早く楽になりたいという意識でギリギリまで時間を使って読む事を放棄してはいないでしょうか(゜-゜)?
はい、
それ結構ね、意味ないと思うんだ。
30秒のうち28秒まで考えるのと、10秒までしか考えないのでは伸びるのはどちらだと思う?
答えは前者!
なぜなら、ギリギリのプレッシャー・ストレスの中で「何かないかな~~!」と頭をフル回転で考えて指した手は価値が高いんです。通常時の何倍も手を読んでいるはずなので上達に繋がる読みの蓄積になります。
これがデカい。
幼稚園・小学校低学年で早指しで勝ちまくっていた子が上に行くと急に勝てなくなる理由は本来あるべき読みの蓄積がすっからかんだから。
(時間攻めは短期的に結果は出る可能性はあるが長期的にみて実力はつかない。)
10秒でしか指せない子は、1手10秒の鍛錬(読みの蓄積)しかしていないんです。
弱くても毎回歯を食いしばりながら1手28秒くらいまで考えて指している子は
1手につき28秒の鍛錬(読みの蓄積)をしています。
そ・れ・が!!
時間が経つにつれて、
1手につき28秒-10秒=18秒分の読みの蓄積が差異として生まれているはずです。
これが何局分も重なっていくとえらいことになる。
これに気づかないと伸び悩むでしょうね。
まぁ早指しで勝てるって事はセンスが良い事の証明でもあるんですが、長期間「読みの蓄積」を積み上げた人には勝てないと思います。
山形で言えば今年奨励会に受かったT橋少年(中2)、県朝日アマ名人戦で2位だったM本少年は秒読みでもギリギリまで考えます、きっと心が強いのでしょう。他の学生との実力差はそこから生まれているのかもしれません。
今の小・中学生でこれが出来ている人はほとんどいないと思っています。時間は使うけども、こちらが早指しするとそれに釣られて早指し返ししたり、終盤で感情が高まるといきなり1秒指ししてきたりする傾向がある。強い人がそれをやるなら戦術なんだろうけどまだまだ君達は…って感じですね。
昔の将棋指導者は、怖い人が多くて「考えろ!」とよく子どもに怒鳴っていたものです。その時代の子どもは削られたけど今となっては得しましたね、なんかよく分からないけど鍛えられました。今は、怒鳴ろうものならTwitterやグループLINEで拡散されてとてもそんな事はやれないですよね。笑
あ、そうだ。
子どもさんがよくやっているウォーズは、大会前の特訓に使うのはやめたほうがいいですね。3切れも10秒も全然考えて指していない(読みが入っていない)ので将棋が雑になると思います。それやるなら将棋倶楽部24の30秒将棋をお勧めします。
また、もう一つの弊害として10秒将棋・3切れ・棋神等、負けた理由をいくらでも何かに転嫁できるっつうのもあひゃだと思います。そこは伝統文化将棋的な発想で自分の弱さを認めないと強くなれないですね。
有段者がよく「ウォーズは遊び」と言っているけどまさにそう。
遊びです!!
ついでに棋譜が覚えられない人達へ。
将棋アプリは早指ししてもネット上に棋譜が記録されるから覚える必要ないですよね。
しかし、リアルで早指しすると棋譜覚えられないですよね?
ネット将棋と同じノリで、例えば1手10秒で指した将棋を再現できるかと言われたら私も厳しいです(考えていないので)。でも30秒ならその局面を考える=記憶している時間が3倍なので出来ます。
なので、リアルでは早指しせずにたくさん考えて棋譜を覚える努力をしましょう。棋譜が思い出せないと反省もできない→伸びないのコンボです。
【まとめ】
将棋の地力をつけるには苦しい時間・辛い時間を経由する鍛錬が必要だと考えます。
詰将棋を解くにしても必至解くにしても「答えと合っていたら終わり」「解法暗記で終わり」では疑問です。知識はついたけど力がついてなければトータルで将棋は勝てません。歯をくいしばって全変化を読みきるほうがタイムアタックゲームより子どもも大人も嫌がります、そっちのほうがきついから。
実戦も同じです。
秒読みというしんどい時間でも、強くなりたかったらギリギリまで考えて指すようにしてください。
「うちの子はすぐ早指しをしてしまう」とお悩みの方、相手が弱い可能性があります。相手が強ければ「時間を使わないと勝てない」と本能的に気づくでしょう。なので強い相手としんどい将棋を指してください。そうすることで時間を使う癖はついてくると思います。
結局、知識をつける時短術はあっても、地力をつける時短術は無いんでしょうね。
知識はスタイリッシュに得つつも、地力は昭和同様 時間をかけてしんどい思いをしてつけなさいというのが現代流の勉強法の解なのかもしれません。
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コメント
良い悪代官
これからは、朝日アマ名人の言うことは絶対です。
信用につながることでしょう。
考える、これは難しいことです。
天童教室特訓組(1-3年)にも言えることですが、
ノータイムでさせる局面は、良いが
3-4つの候補手がある場合、ノータイムで指す傾向にあるようです。
ここは考える(読みを入れる)局面でしょう!
と言うのですが、なかなか理解できないようです。
学力が上がれば理解できるのか?
これが、現在の課題です。
初段になるために必要だと解ればよいのですが。
2018/11/10 URL 編集
あべしん
二回裏で良い悪代官様の送りバントがあってこその優勝でした、ありがとうございます。
特訓組は学年的にも一癖ありますね。
何度か痛い目にあわせてなおかつ自分の読みが浅かったと分からせる経験をさせてあげないといけないのかもしれません。
あべけん棋士も序盤で変な手を指す子には徹底的にそれを咎めて分からせないといけないと言ってました。
また、
天童の成功例、尾形・ぱるる・M本少年・T橋少年を分析するのはどうでしょうか?
彼らの小学校時代からの将棋の取り組み方はどうだったのか興味深いです。
2018/11/10 URL 編集